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RS485とは?基本仕様と通信方式をわかりやすく解説(シリアル通信:差動信号:産業用通信:規格:プロトコルなど)

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工場の自動化設備・ビルの設備管理・産業用機器の制御ネットワークなど、あらゆる産業現場で「RS485」という通信規格が広く使われています。

RS485はその優れたノイズ耐性・長距離伝送能力・マルチドロップ接続性から、産業用シリアル通信の事実上の標準として長年活躍してきた規格です。

この記事では、RS485の基本的な仕様・差動信号の仕組み・産業用通信での位置づけ・プロトコルとの関係・電気的特性・代表的な用途などについてわかりやすく解説していきます。

制御システムや組み込み開発に関わる方、RS485の基礎から理解したい方にぜひお読みいただきたい内容です。

RS485とは何か?基本的な定義と規格の概要

それではまず、RS485の基本的な定義と規格の概要について解説していきます。

RS485(正式名称:EIA/TIA-485)は、差動電圧信号を使ったシリアルデータ通信のための電気的インターフェース規格です。

アメリカの電気工業会(EIA)が策定した規格で、1983年に初版が制定されました。

RS485は「物理層(Physical Layer)」の規格であり、信号の電圧レベル・インピーダンス・電気的特性を定めています。

通信プロトコル(データのやりとりの手順)はRS485規格の対象外であり、別途アプリケーション層のプロトコル(Modbus・DMX512・BACnetなど)と組み合わせて使用されます。

RS485は「差動信号」を使う点が最大の特徴です。差動信号とは、2本の信号線(A線・B線)の電位差によって論理レベル(0/1)を表現する方式で、外部ノイズが2線に同相で乗っても差動で打ち消されるため、優れたノイズ耐性を発揮します。これが工場・屋外・長距離配線での採用を支える核心技術です。

RS485の基本仕様一覧

仕様項目 規格値
信号方式 差動(バランス)伝送
最大伝送距離 1200m(低速時)
最大通信速度 10Mbps(短距離)
最大接続ノード数 32(標準)〜256(高インピーダンスドライバ使用時)
通信方式 半二重(標準)・全二重(4線式)
差動電圧範囲(ドライバ出力) ±1.5V以上
コモンモード電圧範囲 -7V〜+12V
終端抵抗 120Ω(線路インピーダンスに合わせる)

差動信号の仕組みとノイズ耐性

RS485の最大の技術的特徴である差動信号について、もう少し詳しく説明します。

差動信号では2本の導体(A線・B線)の電位差で論理値を表します。

A線の電位がB線より高い場合を論理「1」(または「Mark」)、低い場合を論理「0」(または「Space」)と定義します。

ケーブルに外部ノイズが乗ると2本の線に同じノイズ(同相ノイズ)が加わりますが、差動受信器は差分を見るためノイズが相殺されてしまう点がRS485の優れた特性です。

半二重通信と全二重通信

RS485は標準的には2線式の「半二重(Half-Duplex)通信」として構成されます。

半二重では同一の2線を送信・受信で共有するため、送信と受信が同時にはできません。

4線式では送信用2線・受信用2線を分けることで「全二重(Full-Duplex)通信」が実現できますが、配線コストが増加します。

産業用途では一般にマスター・スレーブ構成でのポーリング通信が多く、半二重で十分なケースがほとんどです。

RS485の産業用通信での位置づけと用途

続いては、RS485が産業用通信においてどのように位置づけられているか、またどのような用途で使われているかについて確認していきます。

産業用フィールドバスとしてのRS485

RS485は産業用フィールドバスの物理層として広く採用されています。

「フィールドバス」とは工場や設備の現場(フィールド)でセンサー・アクチュエータ・コントローラなどを接続するためのネットワーク技術の総称です。

RS485をベースとした代表的な上位プロトコルには「Modbus RTU/ASCII」「PROFIBUS(初期)」「DMX512(照明制御)」「BACnet MS/TP(ビル設備管理)」「M-Bus(メーター通信)」などがあります。

RS485が選ばれる理由

RS485が産業用途で長年選ばれ続ける理由として次のポイントが挙げられます。

一つ目は「長距離伝送」で最大1200mという伝送距離は大型工場・ビル設備に対応します。

二つ目は「マルチドロップ接続」で1つのバスに最大32ノード(高インピーダンス品で256ノード)が接続でき、配線コストを削減できます。

三つ目は「高いノイズ耐性」で差動信号により工場内の電気ノイズに強い特性があります。

四つ目は「低コスト」でRS232に比べて低コストで多点接続できます。

これらの特性の組み合わせが、40年以上にわたって産業用通信の主力規格としてRS485が使われ続けている理由です。

RS485の主な用途と適用分野

分野 具体的な用途例 使用プロトコル
FA(工場自動化) PLC・センサー・インバータ間通信 Modbus RTU・PROFIBUS
ビル設備 空調・照明・電力監視システム BACnet・Modbus
舞台・照明 ステージ照明の制御 DMX512
エネルギー管理 電力・ガス・水道メーター読み取り M-Bus・Modbus
交通・セキュリティ アクセス制御・カメラ制御 独自プロトコル・Modbus

RS485の電気的特性と信号品質

続いては、RS485の電気的特性と信号品質に関する詳細について確認していきます。

ドライバとレシーバの電気的規格

RS485規格ではドライバ(送信器)とレシーバ(受信器)の電気的仕様が明確に定められています。

ドライバの出力差動電圧は負荷抵抗54Ω接続時で最低1.5V以上が必要で、無負荷時には最低1.5V以上を出力できなければなりません。

レシーバは差動入力電圧が±200mV以上あれば確実に論理値を判定できる感度を持ちます。

この±200mVという受信感度のおかげで、長距離伝送による信号減衰があっても確実な通信が可能となります。

バスの電気的状態(アイドル時・衝突時)

RS485のバスはドライバが送信していない(三態:ハイインピーダンス)状態でも適切な電位を維持する必要があります。

終端抵抗とバイアス抵抗の設計によって、バスがアイドル時(送信なし)に確定した論理レベルを保つことが通信信頼性の鍵です。

複数のドライバが同時に送信するバス競合(衝突)はRS485では原則として避けなければならず、プロトコルレベルでのアクセス制御が必要です。

ケーブルの特性インピーダンスと整合

RS485通信の信号品質を高めるためには、ケーブルの特性インピーダンスとの整合も重要です。

RS485に使用されるツイストペアケーブルの特性インピーダンスは一般に100〜120Ωであり、終端抵抗には120Ωが標準的に使用されます。

インピーダンス不整合があると信号反射が発生し、通信エラーや波形乱れの原因となります。

RS485の実装と周辺回路設計のポイント

続いては、RS485トランシーバの実装と周辺回路設計における重要なポイントについて確認していきます。

代表的なRS485トランシーバIC

RS485インターフェースを実装するには、RS485トランシーバICを使用します。

代表的な製品として「SN75176」「MAX485」「SP485」などがあり、これらは差動ドライバ・レシーバを1チップに集積しています。

各チップには「送受信切り替え(DE/RE端子)」「ESD保護機能」「ハーフパワー・ローパワーモード」などの機能が搭載されており、用途に応じて選択します。

送受信切り替えの設計

RS485の半二重通信では、マイコン・PLCのソフトウェアが適切なタイミングでドライバイネーブル(送信許可)とレシーバイネーブル(受信許可)を切り替える必要があります。

送受信切り替えのタイミングが不適切だと、バス競合やデータの欠落が発生します。

切り替えタイミングは通信速度・ケーブル長・ドライバの伝播遅延を考慮して設計することが重要です。

ESD(静電気)保護と過電圧保護

産業用環境では静電気や過電圧によるトランシーバの破損リスクがあります。

バス端子にはTVSダイオード(トランジェント抑制ダイオード)やバリスタを追加して過電圧・ESDからICを保護する設計が推奨されます。

特に長距離配線・屋外配線・他の機器と混在する環境では保護回路の追加が必須となります。

まとめ

この記事では、RS485の基本定義・差動信号の仕組み・基本仕様・産業用途での位置づけ・電気的特性・実装上のポイントなどについて詳しく解説してきました。

RS485は差動信号・長距離伝送・マルチドロップ接続という三つの優れた特性により、産業用シリアル通信の標準として長年にわたって活躍しています。

適切なトランシーバ選定・終端抵抗設計・送受信切り替え制御・保護回路設計によって、信頼性の高いRS485通信システムを構築することができます。

RS485の基礎知識を身につけることで、産業用通信システムの設計・トラブルシューティング能力が向上するでしょう。