誘導電動機のすべりとは?意味や計算方法も!(すべり率:回転数:同期速度:公式など)
誘導電動機は、工場設備、ポンプ、送風機、コンベヤ、工作機械など幅広い場面で使われています。
その回転の仕組みを理解するうえで欠かせないのが、回転磁界の速度と回転子の速度の差を表す「すべり」です。
すべりは単なる回転数の遅れではなく、トルクを発生させるために必要な現象でもあります。
この記事では、すべりの意味、すべり率の公式、同期速度との関係、実際の計算例、運転時に確認したい注意点までを順番に解説します。
誘導電動機におけるすべりの意味
それではまず、誘導電動機におけるすべりの意味について解説していきます。
すべりが表す回転速度の差
誘導電動機のすべりとは、固定子がつくる回転磁界の回転速度と、回転子の実際の回転速度との差を指します。
固定子側の回転磁界は電源周波数と極数によって決まり、この速度を同期速度と呼びます。
一方、回転子は同期速度と完全に同じ速度では回転しません。
回転子が回転磁界より少し遅れて回ることで、回転子導体に電流が誘導され、電磁力によってトルクが生まれます。
すべりは誘導電動機が回転力を発生させるための重要な差と考えると理解しやすいでしょう。
同期速度と回転子速度の関係
同期速度は、固定子に流れる交流電流によって生じる回転磁界の速度です。
回転子速度は、モーターの軸が実際に回っている速度を表します。
たとえば同期速度が毎分1500回転で、実際の回転数が毎分1440回転なら、両者の差は毎分60回転です。
この差があるため、回転子から見ると磁界が相対的に動き続け、誘導電流が流れます。
もし回転子が同期速度に達すると、相対的な動きがなくなり、誘導電流もトルクもほぼ発生しません。
誘導電動機では、回転子が同期速度に近づくほどすべりは小さくなります。
ただし、通常運転でもすべりが完全にゼロになることはありません。
すべりがゼロにならない理由
誘導電動機は、回転子に外部から直接電気を供給せず、固定子の磁界によって電流を誘導する構造です。
そのため、磁界と回転子の間に相対速度が必要になります。
負荷が増えると軸を回すために必要なトルクも増えます。
すると回転子はわずかに減速し、すべりが大きくなって誘導電流とトルクが増加します。
このように、負荷に応じてすべりが変化する点が誘導電動機の基本的な特性です。
すべり率と回転数の計算式
続いては、すべり率と回転数の計算式を確認していきます。
すべり率を求める基本公式
すべり率は、同期速度に対して回転子速度がどの程度遅れているかを割合で示したものです。
一般に百分率で表記され、単位はパーセントです。
すべり率は、同期速度から回転子速度を引いた値を同期速度で割り、100を掛けて求めます。
すべり率 = (同期速度 − 回転子速度)÷ 同期速度 × 100
式の中の同期速度は毎分回転数でそろえます。
回転子速度も同じく毎分回転数で入力すれば、計算結果をそのまま比較できます。
すべり率は回転数差そのものではなく、同期速度に対する比率である点に注意が必要です。
回転子速度を求める計算
すべり率が分かっている場合は、実際の回転子速度を逆算できます。
カタログに定格回転数が記載されているモーターでも、すべり率から負荷時の回転数の目安を考えることが可能です。
回転子速度 = 同期速度 × (1 − すべり率)
すべり率を百分率で扱う場合は、たとえば4パーセントを0.04として計算します。
同期速度が1500回転、すべり率が4パーセントなら、回転子速度は1500 × 0.96となります。
計算結果は毎分1440回転です。
この値は4極モーターを50ヘルツ電源で運転したときに見られる代表的な定格回転数の一例です。
回転数差からすべりを求める考え方
現場では、回転計で実測した軸回転数と、電源周波数および極数から求めた同期速度を比べる方法がよく使われます。
回転数差だけを見ても状態の目安にはなりますが、異なる極数や周波数のモーターを比べる場合にはすべり率で判断した方が便利です。
同期速度が3000回転で60回転遅れる場合と、1500回転で60回転遅れる場合では、意味する遅れの大きさが異なります。
前者のすべり率は2パーセント、後者は4パーセントです。
設備診断では、回転数差とすべり率をセットで確認することで、負荷変動や異常の兆候を捉えやすくなります。
同期速度を決める周波数と極数
続いては、同期速度を決める周波数と極数を確認していきます。
同期速度の公式
同期速度は、電源周波数とモーターの極数によって決まります。
交流電源の周波数が高いほど回転磁界は速くなり、極数が多いほど回転磁界は遅くなります。
同期速度 = 120 × 周波数 ÷ 極数
周波数はヘルツ、極数は2極、4極、6極のように入力し、同期速度は毎分回転数で求めます。
この公式は、商用電源で運転する誘導電動機の基礎となる計算です。
インバーターで周波数を変える場合も、極数が一定なら同期速度は周波数に比例して変化します。
周波数別と極数別の同期速度
日本では地域により50ヘルツと60ヘルツの商用電源が使われています。
同じ4極モーターでも、供給される周波数によって同期速度と実回転数は変わります。
| 周波数 | 極数 | 同期速度 | 定格回転数の目安 |
|---|---|---|---|
| 50ヘルツ | 2極 | 毎分3000回転 | 毎分2800から2950回転程度 |
| 50ヘルツ | 4極 | 毎分1500回転 | 毎分1400から1470回転程度 |
| 50ヘルツ | 6極 | 毎分1000回転 | 毎分900から970回転程度 |
| 60ヘルツ | 2極 | 毎分3600回転 | 毎分3400から3550回転程度 |
| 60ヘルツ | 4極 | 毎分1800回転 | 毎分1680から1760回転程度 |
| 60ヘルツ | 6極 | 毎分1200回転 | 毎分1100から1170回転程度 |
定格回転数の目安には負荷、設計、出力、効率などが影響します。
銘板に記載された回転数を確認し、同期速度と混同しないことが大切です。
極数と用途の選び方
2極モーターは高速回転が必要な送風機、ブロワ、研削盤などに用いられます。
4極モーターは汎用性が高く、ポンプ、コンベヤ、工作機械などで多く採用されています。
6極や8極のモーターは比較的低い速度で運転できるため、減速機の構成や必要トルクに応じて選ばれます。
極数は同期速度を決める設計上の重要な要素であり、据え付け後に簡単に変えられるものではありません。
速度制御を行いたい場合は、インバーターによる周波数制御を組み合わせる方法が一般的です。
すべり率の具体的な計算例
続いては、すべり率の具体的な計算例を確認していきます。
4極50ヘルツモーターの例
4極モーターを50ヘルツで運転する場合、同期速度は毎分1500回転です。
ここで銘板の定格回転数が毎分1440回転と仮定します。
回転数差は1500から1440を引いた毎分60回転です。
すべり率 = (1500 − 1440)÷ 1500 × 100
すべり率 = 4パーセント
定格負荷付近で4パーセント程度のすべりは、一般的なかご形誘導電動機で見られる範囲です。
ただし、すべてのモーターに同じ数値が当てはまるわけではありません。
4極60ヘルツモーターの例
4極モーターを60ヘルツで運転すると、同期速度は毎分1800回転です。
実際の回転数が毎分1740回転なら、回転数差は毎分60回転になります。
同じ毎分60回転の差でも、50ヘルツ時の例とはすべり率が異なります。
すべり率 = (1800 − 1740)÷ 1800 × 100
すべり率は約3.3パーセントです。
このように、回転数差だけで状態を判断するのは不十分です。
同期速度を基準にして割合へ換算することで、条件の異なるモーターでも比較しやすくなります。
回転数の実測値を評価するときは、電源周波数と極数を必ず確認することが基本です。
インバーター運転時の例
インバーターで4極モーターを40ヘルツ運転する場合、同期速度は毎分1200回転です。
実測した回転子速度が毎分1152回転なら、すべり率は4パーセントになります。
周波数を下げると同期速度も下がるため、商用電源運転時の回転数をそのまま基準にしてはいけません。
低速域では冷却能力、必要トルク、インバーターの制御方式も確認する必要があります。
特に自己冷却ファンを備えたモーターでは、低速運転が長時間続くと温度上昇につながる場合があります。
負荷変動とすべりの関係
続いては、負荷変動とすべりの関係を確認していきます。
負荷増加時のすべり
ポンプの揚程が高くなった場合や、コンベヤの搬送物が増えた場合、モーターにはより大きなトルクが求められます。
誘導電動機は負荷が増えると回転数が少し低下し、すべりが増加します。
その結果、回転子に誘導される電流が増え、必要なトルクを出そうとします。
これは誘導電動機が負荷変化に対応する基本的な働きです。
定格範囲内では、すべりの増加によってトルクが調整されると理解できます。
始動時の大きなすべり
停止しているモーターでは、回転子速度は毎分0回転です。
このとき回転磁界に対する遅れは最大となり、すべり率は100パーセントです。
始動直後は大きな始動電流が流れ、始動トルクが発生します。
回転数が上昇するにつれてすべりは小さくなり、運転状態に近づいていきます。
始動回数が多い設備では、電源容量、保護装置、軸受や負荷機械への影響も考慮したいところです。
始動時のすべり率は100パーセントです。
定常運転時のすべり率と同じ感覚で扱わず、始動特性として分けて確認しましょう。
過大なすべりが示す状態
通常より回転数が低く、すべり率が明らかに大きい場合は、負荷過大や電源条件の変化が疑われます。
ベルトの張り過ぎ、ポンプ内部の抵抗増加、軸受の劣化、搬送物の詰まりなど、機械側の要因も考えられます。
三相誘導電動機では、欠相や電圧不平衡によってトルクが低下し、発熱が増えることもあります。
回転数だけで結論を出さず、電流値、電圧、振動、温度、異音を合わせて確認することが重要です。
すべり率の急な変化は、設備異常を見つける手掛かりになる場合があります。
すべり確認時の測定と注意点
続いては、すべり確認時の測定と注意点を確認していきます。
銘板情報の確認
計算前には、モーターの銘板に記載されている周波数、極数、定格回転数、定格電流、定格出力を確認します。
極数の記載がない場合でも、周波数と定格回転数からおおよその極数を推定できることがあります。
50ヘルツで定格回転数が毎分1450回転前後なら、4極モーターである可能性が高いでしょう。
ただし、特殊モーターや減速機一体型では仕様を別途確認する必要があります。
回転数の測定方法
実回転数の測定には、非接触式のタコメーター、反射テープを使う光学式回転計、レーザー回転計などが利用されます。
回転部に近づく作業では、巻き込まれ事故を防ぐために保護カバーや周囲の安全を確認してください。
ベルトやカップリングの途中ではなく、できる限りモーター軸に近い位置で測定すると誤差を減らしやすくなります。
減速機やプーリーがある設備では、測定場所と減速比を取り違えないことも重要です。
電源条件と測定誤差
同期速度の計算に使う周波数は、商用電源かインバーター出力かによって異なります。
インバーター運転では設定周波数だけでなく、実際の出力周波数や制御状態を確認すると安心です。
また、回転計の分解能、反射テープの貼り方、軸の振れによって測定値が変わることがあります。
すべり率は小さな差を計算するため、回転数の測定精度が結果に影響しやすい点も押さえておきましょう。
すべりを点検に活用する際は、同じ負荷条件、同じ周波数、同じ測定位置で過去の値と比べることが有効です。
単発の数値よりも、継続的な傾向に注目すると設備状態を判断しやすくなります。
誘導電動機のすべりのまとめ
誘導電動機のすべりは、同期速度と回転子速度の差を示す重要な指標です。
回転子が同期速度より少し遅れて回ることで誘導電流が発生し、モーターはトルクを生み出します。
すべり率は、同期速度から回転子速度を引き、同期速度で割って100を掛けることで求められます。
同期速度は電源周波数と極数で決まり、4極モーターでは50ヘルツで毎分1500回転、60ヘルツで毎分1800回転が基準です。
負荷が増えるとすべりも増え、通常より大きなすべりは過負荷や機械的な異常の兆候になることがあります。
回転数を測定する際は、銘板情報、周波数、極数、測定位置を確認し、電流値や温度などの情報と合わせて判断してください。
すべりの仕組みを理解すれば、誘導電動機の回転数、トルク、負荷状態をより正確に把握できるでしょう。