電気回路図や制御回路図を読む際に、必ず登場するのが各種機器の回路記号(シンボル)です。
その中でも、モーター保護に欠かせないサーマルリレーの記号は、電気技術者や設備保全担当者にとって必ず押さえておきたい基礎知識の一つです。
「サーマルリレーの記号がどれかわからない」「JIS規格ではどのように表記されるのか知りたい」という疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
本記事では、サーマルリレーの記号について、JIS規格に基づいた表記方法から回路図での読み方、関連機器との記号の違いまで、わかりやすく解説していきます。
電気回路図を正確に読み解くための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
サーマルリレーの記号はJIS規格で定められた熱動継電器のシンボルで表される
それではまず、サーマルリレーの記号がどのように定められているかについて解説していきます。
サーマルリレーの記号は?という疑問に対する結論として、JIS C 0617(電気用図記号)に基づいた熱動継電器のシンボルが用いられます。
回路図上では、サーマルリレーは「熱動要素」と「接点」の2つの部分に分けて表記されるのが一般的です。
熱動要素(ヒーター部)は電流が流れる主回路に接続され、接点はサーマルリレーが動作した際に制御回路を開閉する部分を表しています。
この2つが組み合わさることで、サーマルリレー全体の動作が回路図上で表現されます。
記号を正確に理解することは、回路図を読み解く上での基本中の基本といえるでしょう。
サーマルリレーの回路記号は「熱動要素(ヒーター部)」と「接点部(b接点)」の2つで構成されます。
回路図では主回路と制御回路に分けて記載されることが多く、それぞれの役割を理解した上で図面を読み解くことが重要です。
JIS規格に基づいた記号を正確に覚えておくことで、異なるメーカーの回路図でも共通の理解で読み解くことができます。
熱動要素(ヒーター部)の記号
サーマルリレーの熱動要素は、回路図上で波線または折れ線のシンボルで表されることが多く、JIS C 0617では「加熱要素」として規定されています。
このシンボルは主回路(モーターへ電力を供給する回路)上に記載され、電流がこの部分を流れることでバイメタルが加熱される様子を表現しています。
三相モーターの場合、三相それぞれの線にヒーター要素が入るため、回路図には3つの熱動要素が並んで描かれることが一般的です。
ただし、製品や回路図の簡略化によっては、1つの記号でまとめて表記される場合もあります。
図面を読む際は、どの相に熱動要素が入っているかも確認しながら理解を深めましょう。
熱動要素のシンボルの形はメーカーや図面の作成者によって若干異なる場合がありますが、基本的な意味合いは共通しています。
接点部(b接点)の記号と動作
サーマルリレーの接点部は、制御回路(電磁接触器のコイル回路など)に組み込まれ、トリップ動作時に回路を遮断する役割を担います。
サーマルリレーの接点は通常b接点(ノーマルクローズ接点)として表記されます。
b接点とは、通常時(平常時)は接点が閉じており、動作時(トリップ時)に接点が開く方式の接点です。
回路図上でb接点は、接点記号に斜線が入った形や、ラダー図では特定の記号で表現されます。
サーマルリレーがトリップすると、このb接点が開くことで電磁接触器のコイルへの通電が遮断され、モーターへの電力供給が止まる仕組みです。
また、サーマルリレーにはb接点のほかにa接点(ノーマルオープン接点)も内蔵されており、警報回路や表示灯の制御に利用されることがあります。
a接点はトリップ時に接点が閉じる方式であり、トリップ発生を知らせるランプやブザーの回路に活用される点が特徴的です。
| 接点の種類 | 平常時の状態 | トリップ時の状態 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| b接点(NC接点) | 閉(通電) | 開(遮断) | 電磁接触器コイル回路の遮断 |
| a接点(NO接点) | 開(非通電) | 閉(通電) | 警報ランプ・ブザー回路 |
JIS規格と旧規格の記号の違い
日本では電気用図記号の規格としてJIS C 0617が現在の標準規格として採用されています。
以前は旧JIS(JIS C 0301)が使用されていたため、古い図面では異なる記号が使われている場合があります。
旧JIS規格の図面を読む機会がある設備保全の現場では、新旧両方の記号に慣れておくことが実務上必要になることがあります。
特に既設設備の図面は旧規格で描かれていることが多いため、読み間違いを防ぐためにも対応表を手元に置いておくと安心です。
【JIS規格と旧JIS規格の比較ポイント】
現行規格:JIS C 0617(IEC 60617に準拠・国際規格との整合性が高い)
旧規格:JIS C 0301(国内独自規格・古い図面に多く使用)
主な違い:接点記号の形状・ヒーター要素の表記方法など
古い図面を読む際は、どちらの規格で描かれているかを確認することが重要です。
新旧の規格の違いを理解しておくことは、現場での誤読を防ぐためにも非常に重要なポイントです。
回路図でサーマルリレーを正しく読み解く方法
続いては、実際の回路図においてサーマルリレーの記号をどのように読み解くかを確認していきます。
記号を個別に覚えるだけでなく、回路全体の中でサーマルリレーがどのような位置づけにあるのかを理解することが、実務では非常に大切です。
主回路と制御回路の読み分け
電気回路図は一般に主回路(動力回路)と制御回路(補助回路)の2つに分けて描かれます。
主回路はモーターに電力を供給する太い線で描かれた回路で、電源・遮断器・電磁接触器・サーマルリレー(熱動要素)・モーターが直列につながっています。
制御回路は電磁接触器のコイルや各種補助接点、サーマルリレーのb接点などで構成され、主回路の開閉を制御する信号回路です。
サーマルリレーの熱動要素は主回路に、接点部は制御回路にそれぞれ記載されるため、両方の回路を同時に読み解く能力が求められます。
まずは主回路と制御回路の区別をしっかり把握した上で、サーマルリレーの記号を追っていきましょう。
電磁開閉器(マグネットスイッチ)との記号の違い
サーマルリレーと混同しやすい機器として電磁接触器(マグネットコンタクタ)があります。
電磁接触器は電磁コイルの励磁によって接点を開閉する機器で、回路図上ではコイル記号と主接点・補助接点の組み合わせで表記されます。
サーマルリレーと電磁接触器を組み合わせた「電磁開閉器(マグネットスイッチ)」として一体で記号が描かれる場合もあります。
この場合、回路図の中でどの部分がサーマルリレーの熱動要素で、どの部分が電磁接触器の主接点なのかをしっかり区別して読むことが重要です。
各機器の記号の特徴を正確に把握しておくことで、回路図全体の理解が格段に深まります。
| 機器名 | 記号の特徴 | 回路上の役割 |
|---|---|---|
| サーマルリレー(熱動要素) | 波線・折れ線のヒーターシンボル | 過電流による熱でトリップ動作 |
| サーマルリレー(接点部) | b接点記号(斜線付き接点) | 制御回路の遮断 |
| 電磁接触器(主接点) | 接点記号(直線型) | 主回路の開閉 |
| 電磁接触器(コイル) | 円形または矩形のコイル記号 | 接点の励磁・制御 |
| 配線用遮断器 | スイッチ記号に遮断機能の付加 | 短絡・過電流の遮断 |
ラダー図・シーケンス図でのサーマルリレーの記号
PLC(プログラマブルロジックコントローラ)を使ったシステムでは、ラダー図(ラダーダイアグラム)と呼ばれる形式の回路図が用いられます。
ラダー図では、サーマルリレーのb接点は「常閉接点」として表記され、縦棒と斜線を組み合わせた記号で描かれるのが一般的です。
シーケンス制御の学習においても、サーマルリレーのb接点記号は必ず登場するため、ラダー図の読み方と合わせて習得しておきましょう。
ラダー図での記号の意味を正しく理解することで、PLC制御システムのトラブルシューティングも格段にスムーズになります。
シーケンス図とラダー図の両方でサーマルリレーの記号を確認できるようになることが、電気技術者としての実力向上につながるでしょう。
サーマルリレーに関連する機器の記号も合わせて覚えよう
続いては、サーマルリレーと密接に関連する機器の記号も合わせて確認していきます。
実際の回路図では単独の機器だけでなく、複数の機器が組み合わさったシステム全体を読み解く能力が求められます。
関連機器の記号を合わせて把握しておくことで、回路図の理解が一段と深まるでしょう。
配線用遮断器(MCCB)の記号
サーマルリレーと組み合わせて使用される保護機器として、配線用遮断器(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)があります。
配線用遮断器は過電流・短絡電流から回路を保護する機器で、回路図上では遮断機能を持つスイッチ記号で表されます。
サーマルリレーが過負荷保護を担うのに対し、配線用遮断器は主に短絡保護を担うため、両者は役割が異なる点を理解しておきましょう。
実際の制御盤内では、配線用遮断器(一次側)→電磁接触器→サーマルリレー→モーターという順番で回路が構成されることが一般的です。
それぞれの機器の役割と記号を合わせて理解することで、制御回路全体の設計思想がより明確に見えてきます。
電流計・電圧計の記号と読み方
回路図には保護機器だけでなく、計測機器の記号も登場します。
電流計(A:アンペアメーター)は円の中に「A」と記載されたシンボルで表され、主回路上に直列に接続されて運転電流を測定します。
電圧計(V:ボルトメーター)は円の中に「V」と記載され、並列に接続されて電圧を計測します。
サーマルリレーの整定電流を設定する際、電流計の値と銘板の定格電流を照合することは現場でよく行われる作業の一つです。
計測機器の記号を正確に読み取ることができれば、回路図からより多くの情報を引き出せるようになります。
欠相保護リレーの記号と役割
三相電源の1相が断線する「欠相」はモーターに大きなダメージを与える重大なトラブルです。
欠相保護リレーはこの欠相を検知してモーターを保護する機器で、回路図では専用のシンボルで表されます。
欠相保護機能を内蔵したサーマルリレーも市販されており、その場合は回路図上で欠相保護機能付きであることが明記された記号が使われます。
欠相保護リレーの記号は、通常のサーマルリレーの記号と混同しやすいため、図面の凡例(レジェンド)を必ず確認する習慣をつけましょう。
回路図の凡例には各記号の意味が一覧で記載されているため、初めて読む図面では必ず最初に確認することをおすすめします。
まとめ
本記事では、サーマルリレーの記号は?というテーマに沿って、JIS規格に基づいた記号の基本から、熱動要素・接点部の記号の意味、回路図での読み解き方、関連機器との記号の違いまで詳しく解説してきました。
サーマルリレーの記号は「熱動要素(ヒーター部)」と「b接点(制御接点部)」の2つで構成されており、それぞれが主回路と制御回路に分けて記載されます。
JIS C 0617に基づいた現行規格の記号を基本として習得しつつ、旧JIS規格の記号にも対応できるようにしておくことが、実務では非常に有効です。
また、電磁接触器・配線用遮断器・電流計など関連機器の記号も合わせて理解することで、回路図全体をスムーズに読み解けるようになります。
回路図の読解能力は、設備の保全・トラブルシューティング・新規設計のすべてにおいて基盤となるスキルです。
サーマルリレーの記号をしっかりと身につけて、現場での実践力をさらに高めていきましょう。
不明な記号に出会った際は、JIS規格の参照資料やメーカーのカタログ・図面凡例を活用しながら、一つひとつ確実に習得していくことが大切です。