モーター保護に欠かせないサーマルリレーですが、いざ選定しようとすると「どの機種を選べばいいのかわからない」「整定電流の範囲の合わせ方がわからない」という疑問にぶつかる方も多いのではないでしょうか。
サーマルリレーはモーターや電磁接触器との適合性・整定電流の範囲・使用環境・特殊機能の有無など、複数の観点から選定を行う必要があります。
本記事では、サーマルリレーの選定方法について、整定電流の選定基準から機種選定の手順、使用環境に応じた選び方、主要メーカーの特徴まで、実務で役立つ情報を網羅的に解説していきます。
設備の新規導入から既設機器の更新まで、幅広い場面でお役立ていただける内容ですので、ぜひ参考にしてください。
サーマルリレーの選定方法はモーターの定格電流に合った整定電流範囲の機種を選ぶことが基本
それではまず、サーマルリレーの選定方法における最も基本的な考え方について解説していきます。
サーマルリレーの選定方法は?という疑問への結論として、モーターの定格電流が整定電流の調整範囲に収まる機種を選定することが選定の大原則です。
サーマルリレーにはそれぞれ「整定電流範囲」が定められており、モーターの定格電流値がその範囲内に入る機種を選ぶことで、適切な保護設定が可能になります。
定格電流が整定範囲の中央付近に来るように選定すると、ダイヤル調整の余裕が生まれて使いやすくなります。
整定範囲の上限ギリギリに設定しなければならない場合は、ひとつ上の機種への変更も検討しましょう。
サーマルリレー選定の基本ルール
① モーターの定格電流を銘板から確認する
② 定格電流が整定電流範囲に収まる機種を選ぶ(できれば中央付近)
③ 組み合わせる電磁接触器との適合性を確認する
④ 使用環境(温度・防塵・防水)に対応した機種を選ぶ
⑤ 必要に応じて欠相保護機能付きや電子式などの特殊機能を検討する
整定電流範囲の選び方と計算方法
整定電流範囲を選ぶ際は、まずモーターの銘板から定格電流を確認し、その値が整定範囲に収まる機種をメーカーのカタログから選定します。
各メーカーのカタログには、整定電流範囲ごとの機種一覧が表形式で掲載されており、モーターの定格電流値を基に検索できます。
【整定電流範囲の選定例】
モーター定格電流:7.5A の場合
候補① 整定電流範囲「5〜8A」の機種 → 7.5Aが範囲内・上限付近(調整余裕が少ない)
候補② 整定電流範囲「6〜10A」の機種 → 7.5Aが範囲の中央付近(推奨)
上記の場合、候補②の方が調整余裕があり適切な選定となります。
スターデルタ(Y-Δ)起動方式の場合は、定格電流の1/√3(約58%)に相当する整定電流範囲の機種を選定する必要があります。
インバータ(可変速度制御)駆動のモーターでは、サーマルリレーではなくインバータ内蔵の電子式保護機能を活用することが推奨される場合もあります。
機種選定に迷う場合はメーカーの技術サポートに相談することも有効な手段の一つです。
電磁接触器との適合性確認
サーマルリレーは電磁接触器と組み合わせて使用するため、電磁接触器との適合性(組み合わせ可能かどうか)の確認が選定時の重要なポイントです。
同一メーカーの電磁接触器とサーマルリレーを組み合わせる場合は、カタログの組み合わせ表で適合品を確認できます。
直結型(電磁接触器に直接取り付けるタイプ)と別置型(電磁接触器と独立して設置するタイプ)では配線方法が異なるため、設置スペースや配線の手間も考慮して選定しましょう。
異なるメーカーを組み合わせる場合は、機械的な取り付け寸法・電気的な適合性・端子配置などを個別に確認する必要があります。
可能であれば同一メーカーで統一することで、選定・配線・保守の手間を大幅に削減できるでしょう。
| 確認事項 | 内容 | 確認先 |
|---|---|---|
| 適合機種の確認 | 電磁接触器との組み合わせ可否 | メーカーカタログの組み合わせ表 |
| 取り付け方式 | 直結型か別置型か | 製品仕様書・カタログ |
| フレームサイズ | 電磁接触器との外形寸法の適合 | 外形図・寸法表 |
| 制御電圧 | コイル電圧と制御回路電圧の一致 | 仕様書・回路図 |
欠相保護機能の必要性の判断
三相モーターの保護において、欠相保護機能付きのサーマルリレーを選定するかどうかは重要な判断ポイントです。
欠相とは、三相電源の1相が断線・ヒューズ溶断などによって失われる現象で、この状態でモーターを運転すると過熱・焼損の原因となります。
標準的なサーマルリレーでも欠相が発生した場合はトリップしますが、欠相保護機能付きのものはより確実かつ迅速に欠相を検知します。
重要な設備や連続運転が求められる設備では、欠相保護機能付きのサーマルリレーを積極的に選定することが設備の信頼性向上につながります。
使用環境に応じたサーマルリレーの選び方
続いては、設置環境の条件に応じたサーマルリレーの選定ポイントを確認していきます。
屋内・屋外・高温・粉塵環境など、設置場所の環境条件によって適切な機種が異なります。
周囲温度と保護等級(IP規格)の確認
サーマルリレーを選定する際は、設置場所の周囲温度と保護等級(IP規格)の確認が不可欠です。
一般的なサーマルリレーの使用可能温度範囲は0〜40℃程度ですが、高温環境では温度補正が必要になります。
屋外や粉塵が多い環境では、保護等級(IPコード)が高い機種(例:IP65以上)を選定することで、環境に対する耐久性が確保できます。
IP規格の最初の数字が「塵埃の侵入に対する保護度」、2番目の数字が「水の侵入に対する保護度」を示しています。
設置環境を正確に把握し、その環境に適した保護等級の機種を選ぶことがサーマルリレーの長期安定動作につながります。
インバータ駆動モーターへの対応
インバータ(インバーター)を用いた可変速度制御システムでは、サーマルリレーの選定に特別な注意が必要です。
インバータ駆動では出力周波数が変動するため、通常のバイメタル式サーマルリレーでは電流の高調波成分の影響を受けやすく、誤動作の原因になることがあります。
インバータと組み合わせる場合は、インバータ出力対応の電子式過電流リレーを選定するか、インバータ内蔵の電子サーマル機能を活用することが推奨されます。
インバータメーカーのカタログには、対応する保護機器の推奨品が記載されていることが多いため、必ず参照して選定しましょう。
インバータ駆動システムにおける保護機器の選定を誤ると、モーターの保護が適切に機能しないだけでなく、インバータ自体のトラブルにも発展する可能性があります。
電子式サーマルリレーとバイメタル式の選び分け
近年は従来のバイメタル式に加えて電子式サーマルリレー(デジタル過電流リレー)の普及が進んでいます。
電子式は電子回路で電流を検知するため、温度の影響を受けにくく設定精度が高いという特長があります。
また、現在の電流値をデジタル表示で確認できる機種や、トリップ履歴を記録できる機種もあり、保守・管理の効率化に大きく貢献します。
| 項目 | バイメタル式サーマルリレー | 電子式サーマルリレー |
|---|---|---|
| 温度影響 | 受けやすい(補正が必要な場合あり) | ほぼ受けない |
| 設定精度 | アナログダイヤル | デジタル設定・高精度 |
| コスト | 低コスト | やや高コスト |
| 表示機能 | なし(目視のみ) | 電流値・履歴のデジタル表示 |
| インバータ対応 | 基本的に非推奨 | 対応機種あり |
| 主な用途 | 汎用モーター保護 | 精密保護・インバータ制御 |
一般的な汎用モーターの保護にはバイメタル式で十分対応できますが、重要設備・インバータ駆動・精密な保護が求められる用途では電子式の選定を検討しましょう。
主要メーカーのサーマルリレー製品と選定のポイント
続いては、国内外の主要メーカーのサーマルリレー製品と、それぞれの選定ポイントを確認していきます。
メーカーによって特徴や機能が異なるため、設備の要件に合ったメーカー・機種を選ぶことが重要です。
三菱電機・富士電機・オムロンの主要製品
日本国内で広く使用されているサーマルリレーの代表的なメーカーとして、三菱電機・富士電機・オムロンが挙げられます。
三菱電機のTHシリーズは、豊富な整定電流範囲のラインナップと同社電磁接触器(SCシリーズなど)との高い適合性が特長です。
富士電機のTR0・TRシリーズは、高い動作精度と信頼性で工場設備を中心に幅広く採用されています。
オムロンのK2CM・J7TKシリーズは、電子式過電流リレーとして高精度な電流管理と豊富な保護機能を備えており、精密設備向けに適しています。
国内メーカー製品は国内技術サポートが充実しており、部品の入手性も良好な点がメリットです。
シュナイダー・ABBなどのグローバルメーカーの特徴
グローバルメーカーであるシュナイダーエレクトリック・ABB・シーメンスなどのサーマルリレーも、国内の工場や設備で広く採用されています。
これらのメーカーはIEC規格に準拠した製品を展開しており、国際規格に基づいた設計や輸出向け設備への採用に向いています。
シュナイダーのTeSys D・LRDシリーズは、コンパクトな設計と豊富な電流範囲で幅広い用途に対応します。
グローバルメーカー製品は海外現地法人や工場でのメンテナンス性に優れている点が大きなメリットです。
国内専用か国際展開かという観点でメーカーを選定することも、長期的な設備管理の観点から重要な判断基準の一つとなります。
選定時のコスト・保守性・将来の拡張性の考慮
サーマルリレーの選定では、初期コストだけでなく保守性・部品の入手性・将来の拡張性も総合的に考慮することが重要です。
製品が廃番になった場合の代替品の入手性を事前に確認しておくことで、長期的な設備維持のリスクを軽減できます。
同一工場・同一設備内で複数台のモーターを使用する場合は、メーカーや機種を統一することで予備品の一元管理が可能になり、メンテナンスコストの削減につながります。
将来的に設備の増設や改造が見込まれる場合は、同一シリーズで幅広い電流範囲の製品が揃っているメーカーを選定すると拡張性が高くなります。
初期コストと長期的な運用コストのバランスを踏まえた総合的な判断が、最適なサーマルリレー選定への近道です。
まとめ
本記事では、サーマルリレーの選定方法は?というテーマに沿って、整定電流範囲の選び方から電磁接触器との適合確認、使用環境への対応、主要メーカーの特徴まで幅広く解説してきました。
サーマルリレーの選定において最も基本となるのは、モーターの定格電流が整定電流範囲の中央付近に来る機種を選ぶことです。
さらに、電磁接触器との適合性・使用環境(温度・保護等級)・欠相保護機能の要否・バイメタル式か電子式かという観点を組み合わせて、最適な機種を選定しましょう。
インバータ駆動システムでは通常のバイメタル式では対応が難しい場合があるため、電子式過電流リレーやインバータ内蔵の保護機能の活用を検討することが重要です。
メーカー選定においては、初期コストだけでなく保守性・部品入手性・将来の拡張性も考慮した長期的な視点で判断することが、安定した設備運用の鍵となります。
サーマルリレーの選定に迷った際は、メーカーのカタログ・選定表・技術サポートを積極的に活用し、確実な機種選定を行いましょう。
適切に選定されたサーマルリレーは、大切なモーターと設備を長期にわたって守り続ける、現場の安全と生産性を支える重要な保護機器です。
今回の解説が、現場でのサーマルリレー選定の一助となれば幸いです。