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リアクトル始動とは?誘導電動機の始動方式も!(始動電流制限:電圧降下抑制:始動トルク特性:配線設計など)

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大型の誘導電動機(モーター)を電源に直接接続して起動すると、定格電流の5〜8倍にも達する大きな始動電流が流れ、電源系統の電圧降下や周辺機器への悪影響を引き起こします。

この始動電流を抑制するための手法のひとつが「リアクトル始動」です。

本記事ではリアクトル始動の仕組みと特徴から、始動電流制限の原理・電圧降下抑制効果・始動トルク特性への影響・配線設計上のポイント・他の始動方式との比較まで詳しく解説していきます。

リアクトル始動とは?基本的な仕組みと原理を解説

それではまず、リアクトル始動の基本的な仕組みと原理について解説していきます。

リアクトル始動とは、誘導電動機の始動時に電源とモーターの間にリアクトルを直列接続することで始動電流を制限し、電源系統への影響を抑えながら電動機を安全に起動する始動方式です。

始動完了後はリアクトルを短絡(バイパス)して全電圧・全電流での定格運転に移行します。

リアクトル始動の動作フロー

①始動時:電源→リアクトル(直列接続)→モーター(低電圧始動)

②加速中:リアクトルのインピーダンスで電流を制限しながら加速

③始動完了:リアクトルを短絡スイッチでバイパス→全電圧・定格運転へ移行

リアクトルは始動電流を抑制する「電流制限装置」として機能します。

始動電流が大きくなる理由

誘導電動機を直入れ始動(全電圧直接始動)した場合に大電流が流れる理由は、停止状態のモーターが静止した状態では回転磁界との速度差(スリップ)が最大(スリップ=1)であり、この状態ではモーターの等価インピーダンスが非常に小さいためです。

等価インピーダンスが小さいと電源電圧を小さなインピーダンスで割ることになり、定格電流の5〜8倍(機種によってはそれ以上)の大電流が流れます。

この大電流は電源系統の電圧降下・ブレーカーの誤動作・同一系統上の他機器への悪影響・モーター自体の熱的ストレスなど多くの問題を引き起こします。

リアクトルによる始動電流制限の原理

リアクトルを直列挿入することで電源とモーターの間にインダクタンス分のインピーダンスが追加され、回路全体のインピーダンスが増加します。

全体インピーダンスの増加によって始動電流が制限され、電源電圧・始動電流・リアクトルのリアクタンス値の関係は以下のように表されます。

リアクトル始動の始動電流計算

始動電流 I_start = V / (Z_motor + X_L)

V:電源電圧

Z_motor:始動時のモーターインピーダンス

X_L:リアクトルのリアクタンス(2πfL)

X_Lが大きいほど始動電流が小さく抑制されますが、始動トルクも低下します。

リアクトルのリアクタンス値を適切に設計することで、始動電流を直入れ始動時の40〜70%程度に抑制しながら必要な始動トルクを確保できます。

始動トルク特性への影響と設計上の考慮

続いては、リアクトル始動が始動トルクに与える影響と設計上の考慮事項について確認していきます。

始動電流の抑制と始動トルクの確保はトレードオフの関係にあるため、適切なバランスの設計が重要です。

リアクトル始動における始動トルクの低下

誘導電動機の始動トルクは電圧の2乗に比例するという特性があります。

リアクトルを挿入することでモーター端子電圧が低下(電源電圧よりリアクトルの電圧降下分だけ低くなる)するため、始動トルクは電圧比の2乗に比例して低下します。

リアクトル始動の始動トルク計算

始動トルク T_start =(V_motor / V_source)² × T_DOL

V_motor:モーター端子電圧(リアクトル挿入後)

V_source:電源電圧

T_DOL:直入れ始動時の始動トルク

例:モーター端子電圧が電源電圧の70%に低下した場合、始動トルクは0.7²=0.49倍(49%)に低下します。

負荷の始動特性に合わせたリアクトル選定

リアクトル始動を採用する際は負荷の必要始動トルクを正確に把握した上でリアクトルのリアクタンス値を選定することが重要です。

ポンプ・ファン・コンプレッサーなど始動トルクが比較的小さくてよい負荷には大きなリアクタンスのリアクトルで電流をより抑制できますが、クラッシャー・コンベヤーなど大きな始動トルクが必要な負荷ではリアクタンスを小さくして始動トルクの確保を優先する必要があります。

リアクトル始動は始動電流を直入れ比で50〜70%程度に抑制できる一方、始動トルクが直入れ比で25〜50%程度に低下するため、負荷特性との適合確認が選定の必須ステップです。

電圧降下抑制効果と電源系統への影響

続いては、リアクトル始動による電圧降下抑制効果と電源系統への影響について確認していきます。

リアクトル始動の採用判断において電源系統への影響評価は非常に重要です。

電圧降下の計算と許容基準

電動機の始動時に電源系統で発生する電圧降下は以下の式で概算できます。

始動時電圧降下の概算式

電圧降下率(%)≒ 始動電流(kA)× 系統インピーダンス(Ω)÷ 電源電圧(kV)× 100

リアクトル始動で始動電流を50%に抑制すると電圧降下も概ね50%に低減されます。

一般的な許容電圧降下の目安:工場内系統で10〜15%以内が許容範囲とされることが多いです。

電源容量・変圧器容量との関係

大型電動機を始動する際の電圧降下問題は、電源(変圧器)容量が小さい場合や同一系統に複数の精密機器・制御機器が接続されている場合に特に深刻になります。

リアクトル始動によって始動電流を抑制することで変圧器容量を増強することなく大型電動機の始動が可能になり、設備投資コストの削減に貢献します。

特に既設の電気設備に大型電動機を追加増設する場合に、既存の変圧器・開閉設備の能力範囲内での始動を実現する手段としてリアクトル始動が有効です。

他の始動方式との比較

続いては、リアクトル始動と他の誘導電動機始動方式との比較について確認していきます。

誘導電動機の始動方式にはリアクトル始動のほかにもいくつかの方式があり、特徴を比較した上で最適な選択をすることが重要です。

主要な始動方式の比較

始動方式 始動電流抑制効果 始動トルク コスト 主な用途
直入れ始動 なし(最大電流) 最大 最安 小型・頻繁始動
リアクトル始動 中(50〜70%) 25〜50% 中型・ポンプ・ファン
スターデルタ始動 1/3に抑制 1/3に低下 低〜中 中型・軽負荷始動
インバータ始動 最大(ほぼ制限なし) 自由設定可 全般・精密制御
コンドルファ始動 大(25〜64%) 6〜41% 中〜高 大型・低始動トルク負荷

スターデルタ始動との比較

スターデルタ始動はリアクトル始動と並んでよく採用される始動方式です。

スターデルタ始動は始動時に固定子巻線をスター結線(Y結線)にして電圧を1/√3に低下させ、始動完了後にデルタ結線(Δ結線)に切り替える方式で、始動電流・始動トルクともに直入れ始動の1/3になります。

リアクトル始動はリアクタンス値の選定によって始動電流・始動トルクの抑制率を連続的に調整できる柔軟性があるのに対し、スターデルタ始動は固定的に1/3になるという違いがあります。

インバータ始動との比較と選択基準

近年は可変速インバータ(VFD:Variable Frequency Drive)を使った始動制御が普及しており、始動電流・始動トルク・加速時間を自由に制御できる優れた始動方式として多くの用途で採用されています。

インバータ始動はリアクトル始動と比べて初期コストが高いものの、省エネ(ポンプ・ファンの流量制御)・長寿命・細かい始動・停止制御・ソフトスタート機能など多くのメリットがあり、トータルコストでは優れた選択肢となる場合が多いです。

配線設計上のポイントと選定の注意事項

続いては、リアクトル始動の配線設計上のポイントと選定の注意事項について確認していきます。

リアクトル始動を実際に設計・施工する際には適切な配線設計と部品選定が安全で確実な始動を実現します。

リアクトルの選定パラメータ

始動用リアクトルを選定する際に確認すべき主なパラメータとして、定格電圧・定格電流・始動電流倍数・インダクタンス値(mH)・温度上昇・使用電動機容量(kW)・始動頻度などが挙げられます。

始動頻度が高い用途(頻繁に始動・停止する設備)では始動ごとの温度上昇の累積に対する熱的余裕(デレーティング)の確認が重要です。

タイマー設定と切り替えシーケンス

リアクトル始動では始動完了を検知してリアクトルを短絡(バイパス)するタイミングの設定が重要です。

タイマーリレーによる時限式切り替えが一般的で、設定時間はモーターが十分加速して始動電流が定格電流近くまで低下する時間に合わせます。

切り替えが早すぎると加速不十分な状態でリアクトルをバイパスして大電流が再発生し、遅すぎるとリアクトルの熱的負担が増大するため、適切なタイマー設定値の確認が不可欠です。

まとめ

リアクトル始動は誘導電動機の始動電流を抑制して電源系統の電圧降下を防ぐ効果的な始動方式であり、特に中型〜大型電動機の始動に広く活用されています。

始動電流を直入れ始動比で50〜70%程度に抑制できる一方、始動トルクも25〜50%程度に低下するというトレードオフがあるため、負荷の始動特性との適合を確認した上での選定が重要です。

スターデルタ始動・インバータ始動など他の始動方式との特徴比較を行い、設備のコスト・制御要件・負荷特性に最適な始動方式を選択することが電動機設備の長期的な安定運用につながるでしょう。