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励磁突入電流の対策方法は?抑制装置や技術も!(投入角制御:直列リアクトル:ソフトスタート:予励磁方式など)

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励磁突入電流は変圧器の投入時に発生する大電流であり、保護リレーの誤動作・系統電圧の低下・機器へのストレスなど多くの問題を引き起こします。

これらの問題を解決するために、様々な抑制技術・装置が開発・実用化されています。

本記事では、励磁突入電流の代表的な対策方法である投入角制御・直列リアクトル・予励磁方式・ソフトスタートについて、原理から実用例まで詳しく解説します。

励磁突入電流の対策の考え方と主な方法

それではまず、励磁突入電流の対策の基本的な考え方と主な方法について解説していきます。

励磁突入電流の対策は大きく3つのアプローチに分類できます。

第一に「電流のピーク値を抑制する方法」、第二に「過渡磁束の発生を抑制する方法」、第三に「残留磁束をコントロールする方法」です。

これらのアプローチに基づいて、各種の抑制技術が開発されています。

励磁突入電流対策の選定においては、変圧器の容量・系統の条件・コスト・メンテナンス性を総合的に考慮することが重要です。

大容量変圧器では投入角制御が有効であり、中小容量では直列抵抗・リアクトルによる方式がコスト面で有利なケースが多くあります。

主な対策方法の一覧と比較

対策方法 原理 主な適用場面 特徴
投入角制御 最適位相でのスイッチング 大容量変圧器・系統変圧器 高精度・装置コスト高
直列抵抗・リアクトル インピーダンスで電流制限 中小容量変圧器 シンプル・通常時の損失あり
予励磁方式 投入前に残留磁束を調整 大容量・高信頼性要求 効果大・制御複雑
ソフトスタート 徐々に電圧を上昇させる 産業用変圧器・モーター 電圧変動軽減

直列抵抗・リアクトル挿入による抑制方法

最もシンプルな対策方法の一つが、変圧器の一次側に直列に抵抗またはリアクトルを挿入する方法です。

直列インピーダンスを追加することで、励磁突入電流のピーク値を抑制できます。

しかし、通常運転時にも直列インピーダンスが接続されていると電力損失・電圧降下が生じるため、起動後にバイパスする(短絡する)切替スイッチとの組み合わせが一般的です。

設備・制御がシンプルで低コストな方法であるため、中小容量の変圧器や産業設備への適用に適しています。

投入角制御(Controlled switching)の原理

投入角制御は、励磁突入電流を最小化する電源電圧の位相(最適投入角)を狙ってサイリスタや高速遮断器を制御する方法です。

残留磁束が存在しない場合は電圧ピーク付近での投入が最適であり、残留磁束がある場合は残留磁束に応じた位相補正が必要です。

高精度な位相検出回路・残留磁束推定アルゴリズム・高速スイッチング素子(サイリスタ)の組み合わせによって実現されます。

大容量の送配電用変圧器での採用実績があり、効果が高い先進的な対策方法といえるでしょう。

予励磁方式と残留磁束の制御

続いては、予励磁方式と残留磁束の制御について確認していきます。

予励磁方式の原理と効果

予励磁方式(Pre-fluxing method)は、変圧器の投入前に意図的に鉄心の残留磁束を制御する方法です。

具体的には変圧器を投入する前に、専用の直流電源または交流電源から制御された電流を鉄心に流し、残留磁束を投入時の過渡磁束に適した値に設定します。

最適な残留磁束状態にしてから変圧器を投入することで、励磁突入電流を大幅に低減できます。

制御システムが複雑になるため、主に高信頼性が求められる大容量変圧器や発電所向けの変圧器に適用されています。

残留磁束低減のための遮断制御

変圧器の電源を遮断する際も励磁突入電流抑制の観点から重要な考慮が必要です。

遮断位相を制御することで残留磁束の大きさを意図的に小さくし、次回投入時の励磁突入電流を低減させる方法があります。

これはデ-エネジャイゼーション制御(De-energization control)とも呼ばれ、投入制御と組み合わせた総合的な励磁突入電流管理の一環として活用されます。

ソフトスタート方式の原理と適用

ソフトスタート(Soft start)方式は、変圧器への印加電圧をゼロから徐々に上昇させることで、急激な磁束変化を抑制して励磁突入電流を低減する方法です。

電力用半導体素子(サイリスタ・IGBT)を使った可変電圧制御によって実現されます。

変圧器だけでなく、大型モーターの起動時の突入電流抑制にも広く適用されており、産業用設備での採用実績が豊富です。

電圧立ち上がり時間の設定により突入電流の大きさを調整できるため、系統の条件に合わせた柔軟な対応が可能でしょう。

励磁突入電流対策の選定と実務的なポイント

続いては、励磁突入電流対策の選定と実務的なポイントについて確認していきます。

変圧器容量・系統条件に応じた対策の選定

励磁突入電流対策の選定は変圧器の容量・系統インピーダンス・保護協調の要件・コスト制約を総合的に評価して行います。

小容量変圧器(数kVA〜数百kVA)では、保護リレーのタイムディレイ設定や過電流リレーのピックアップ値の調整による対応が現実的です。

中容量(数百kVA〜数MVA)では直列抵抗・リアクトル方式が費用対効果に優れています。

大容量(数十MVA以上)では投入角制御や予励磁方式による高度な対策が採用されるケースが多いでしょう。

保護リレーの設定と保護協調の調整

励磁突入電流対策として、保護リレーの設定調整も実務上重要な対応の一つです。

過電流リレー(51)のピックアップ電流値を励磁突入電流の最大値より高く設定する・または時限を設けて瞬時動作を抑制することで誤動作を防ぎます。

ただし保護リレーのピックアップ値を上げすぎると内部短絡事故の検出感度が低下するため、保護協調の観点からの慎重な設定が必要です。

実際の施工・試験での確認ポイント

励磁突入電流対策を施した変圧器の施工・試験では、次の確認が重要です。

投入試験(初通電試験)では実際の励磁突入電流の大きさ・波形・持続時間を測定して設計値と比較します。

保護リレーの動作確認では、励磁突入電流が流れた際にリレーが誤動作しないことを実際の投入操作で検証します。

これらの試験結果を記録・保管することが将来の保全・トラブル対応に役立つでしょう。

まとめ

本記事では、励磁突入電流の対策方法として投入角制御・直列リアクトル・予励磁方式・ソフトスタートの原理と特徴、対策選定のポイントまで詳しく解説しました。

励磁突入電流の抑制は変圧器の安定運用・保護システムの信頼性確保・系統電圧品質の維持において重要な課題です。

変圧器の容量・系統条件・コスト・保護協調の要件を総合的に評価し、最適な対策方法を選定することが実務的な解決策となるでしょう。

本記事を参考に、励磁突入電流対策への理解と実践に役立てていただければ幸いです。