契約書、利用規約、業務委託契約、秘密保持契約などで見かける「条項」は、英語では主にclauseと表します。
ただし、条項の種類や文書の性質によってprovision、article、termなどを使い分ける必要があり、単純に一語だけ覚えると不自然な表現になる場合もあります。
この記事では、条項の英語表記、読み方、ビジネスメールや契約実務で使える例文、似た言葉との違いをわかりやすく整理します。
条項の英語表記と基本的な意味

それではまず条項の英語表記と基本的な意味について解説していきます。
もっとも基本となるclauseの意味と読み方
「条項」の代表的な英語はclauseです。
読み方はカタカナでクローズに近く、発音記号ではklɔːzと表されます。
clauseは契約書、規約、法律文書などに置かれる、特定の権利、義務、条件、例外を定めた一つの規定を指します。
たとえば、秘密保持に関する条項であれば confidentiality clause、解約に関する条項であれば termination clause と表現できます。
英文法ではclauseが「節」を意味することもありますが、契約実務の文脈では「条項」と理解するのが一般的です。
契約書におけるclauseの例
The parties agreed to the confidentiality clause.
当事者は秘密保持条項に合意しました。
日本語の「第5条」のように条番号を示す場合は、Clause 5のように頭文字を大文字にする表記もよく用いられます。
文書内で固有の条項を指すときは、the clause、this clause、the following clauseなどの形が便利です。
provisionとclauseの使い分け
条項を表す言葉にはprovisionもあります。
読み方はプロヴィジョンに近く、契約、法律、規則などに設けられた規定、定め、措置を広く指す名詞です。
clauseが文書内の個別の条項を指しやすいのに対し、provisionは規定の内容や制度的な定めに焦点が当たりやすい傾向があります。
そのため、契約書の文章では両方とも使えますが、法律や規約の規定全体に触れる場合はprovisionが自然になることがあります。
| 英語 | カタカナの読み方 | 主な意味 | 使われやすい場面 |
|---|---|---|---|
| clause | クローズ | 個別の条項 | 契約書、合意書、約款 |
| provision | プロヴィジョン | 規定、定め、条項 | 法律、規則、契約の内容説明 |
| article | アーティクル | 条、条文 | 第何条という構成 |
| term | ターム | 条件、契約条件 | 取引条件、雇用条件 |
たとえば、This provision applies to all employees.は「この規定はすべての従業員に適用されます」という意味です。
一方で、Please review the indemnity clause.なら「補償条項を確認してください」となり、特定の一項目を確認してほしい場面に適しています。
articleやtermなど関連語との違い
articleは、契約書や法律の「条」を表す語です。
Article 1、Article 2のように文書全体を大きく区切る単位として使われることが多く、日本語の「第1条」「第2条」に近い表現です。
Articleの内部に複数のclauseが置かれる構成もあり、両者は完全な同義語ではありません。
termは条件、期間、契約条件を指す言葉で、条項そのものというより、当事者間で合意した条件内容に重点があります。
Terms and Conditionsは利用規約や取引条件として広く使われる定型表現です。
契約書の「個別の条項」を指すならclauseが基本です。
規定の内容や制度上の定めを説明するならprovision、第何条という見出し単位ならarticle、合意した条件全般ならtermを選ぶと意味が伝わりやすくなります。
条項を表す英単語の品詞とスペル
続いては条項を表す英単語の品詞とスペルを確認していきます。
名詞として使うclauseとprovision
clauseは名詞であり、基本的には可算名詞として扱われます。
一つの条項ならa clause、複数の条項ならclausesです。
provisionも名詞で、a provision、provisionsのように数えられます。
契約書の中に複数の規定があることを説明する際は、the provisions of this agreementという表現がよく使われます。
名詞の基本形
clause
clauses
provision
provisions
There is a clause concerning intellectual property.は「知的財産に関する条項があります」という意味です。
The provisions remain effective after termination.は「その規定は契約終了後も有効です」と訳せます。
形容詞として使えるcontractualとapplicable
条項そのものを表す形容詞はありませんが、契約上のという意味のcontractualがよく使われます。
contractual obligationは契約上の義務、contractual termsは契約条件という意味になります。
また、適用されるという意味のapplicableは、applicable clauseやapplicable provisionのように使用できます。
relevant clauseは関連する条項、specific clauseは特定の条項、mandatory provisionは義務的な規定という意味です。
| 表現 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|
| contractual | 契約上の | contractual obligation |
| applicable | 適用される | applicable provision |
| relevant | 関連する | relevant clause |
| specific | 特定の | specific clause |
| binding | 拘束力のある | binding term |
ビジネス英語では、単にclauseと言うよりrelevant clauseやapplicable provisionのように修飾語を添えると、何を指すのかが明確になります。
動詞表現と実務で使う組み合わせ
clause自体は通常、動詞として使いません。
条項に関する動作は、include、add、insert、amend、revise、remove、comply withなどの動詞で表します。
include a clauseは条項を含める、add a clauseは条項を追加する、amend a clauseは条項を修正するという意味です。
comply with a clauseは条項を遵守する、be subject to a clauseは条項の適用を受けるという意味になります。
実務で使いやすい動詞表現
We will add a payment clause to the agreement.
当社は契約書に支払条項を追加します。
Please revise the clause before signing.
署名前にその条項を修正してください。
特にamendは契約変更で頻出する語で、amendmentは修正、変更契約、追加合意書を表す名詞です。
条項を変更する場合は、The clause shall be amended as follows.のような硬めの契約文言も見られます。
条項に関する英語例文とビジネスでの使い方
続いては条項に関する英語例文とビジネスでの使い方を確認していきます。
契約書の確認を依頼する例文
取引先に契約内容を確認してもらう場面では、丁寧で具体的な依頼表現が重要です。
Please review the termination clause in the attached agreement.は「添付した契約書の解約条項をご確認ください」という意味です。
Could you clarify the scope of this provision.は「この規定の適用範囲を明確にしていただけますか」という依頼になります。
We would appreciate your comments on the liability clause.は、責任条項についてコメントを求める丁寧な表現です。
相手に負担をかけすぎない印象にしたい場合は、pleaseやwould appreciateを添えるとよいでしょう。
契約確認の依頼では、条項名だけでなく、該当する条番号やページ番号も示すと親切です。
Please review Clause 8 regarding confidentiality.のように書けば、相手は確認対象をすぐに特定できます。
修正や追加を提案する例文
契約交渉では、条項の変更を直接的に要求するより、提案の形にすると円滑に進みやすくなります。
We would like to propose a revision to the payment clause.は「支払条項の修正を提案したいと考えています」という意味です。
Could we add a clause covering data protection.は「データ保護を対象とする条項を追加できますか」という表現です。
We suggest revising the wording of Article 4.は「第4条の文言を修正することを提案します」となります。
wordingは文章の言い回しや文言を指すため、契約書の語句を細かく調整したい場合に役立ちます。
| 英語例文 | 日本語の意味 | 主な用途 |
|---|---|---|
| We propose adding a new clause. | 新しい条項の追加を提案します。 | 追加提案 |
| Please delete this provision. | この規定を削除してください。 | 削除依頼 |
| The clause needs to be revised. | その条項は修正が必要です。 | 修正指摘 |
| We accept the revised terms. | 修正後の条件を受諾します。 | 合意連絡 |
合意内容や遵守義務を伝える例文
条項に合意したこと、あるいは条項を守る必要があることを伝える表現もビジネスで重要です。
Both parties shall comply with the terms of this agreement.は「両当事者は本契約の条件を遵守するものとします」という意味です。
The confidentiality clause survives termination.は「秘密保持条項は契約終了後も存続します」と訳せます。
We are bound by the provisions of the contract.は「当社は契約の規定に拘束されます」という意味です。
shallは契約書で義務や取り決めを表すことが多い語ですが、通常のメールではwillやmust、need toなどに置き換えるほうが自然な場面もあります。
契約書の表現と日常的なビジネスメールの表現を区別することが、読みやすく誤解の少ない英語につながります。
条項の種類を表す英語表現
続いては条項の種類を表す英語表現を確認していきます。
秘密保持や知的財産に関する条項
秘密保持条項はconfidentiality clauseまたはnon disclosure clauseと表せます。
秘密保持契約そのものはNon Disclosure Agreementで、略称はNDAです。
ただし、NDAは条項の略称ではなく、秘密保持を目的とした契約書全体の略称として使われる点に注意が必要です。
知的財産権に関する条項はintellectual property clause、またはIP clauseと呼ばれることがあります。
IPはintellectual propertyの短縮形で、社内の会話や実務メールでは広く通じますが、初めて使う文書では正式名称を併記すると安心です。
関連する定型表現
confidentiality clause
秘密保持条項
intellectual property rights clause
知的財産権条項
支払い、責任、補償に関する条項
支払条項はpayment clause、価格に関する規定はpricing provisionと表せます。
責任制限条項はlimitation of liability clauseで、契約交渉で特に慎重な確認が求められる項目です。
補償条項はindemnity clause、損害賠償に関する条項はdamages clauseという表現が使われます。
force majeure clauseは不可抗力条項を意味し、災害、戦争、感染症、行政措置など、当事者が合理的にコントロールできない事情を扱います。
| 日本語 | 英語表記 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 支払条項 | payment clause | 期限、通貨、遅延時の扱い |
| 責任制限条項 | limitation of liability clause | 賠償上限、除外事項 |
| 補償条項 | indemnity clause | 補償範囲、請求手続き |
| 不可抗力条項 | force majeure clause | 対象事由、通知義務 |
これらは企業間契約においてリスク配分を決める重要な部分です。
英語を日本語に訳すだけで判断せず、対象範囲や責任の条件を確認する姿勢が欠かせません。
契約期間や終了に関する条項
契約期間に関する条項はterm clauseやduration clauseと呼ばれます。
契約終了に関する条項はtermination clauseが一般的です。
更新条項はrenewal clause、自動更新条項はautomatic renewal clauseと表せます。
解約通知に関する規定はnotice provision、通知期間はnotice periodです。
たとえば、Either party may terminate this agreement upon thirty days’ written notice.は「いずれの当事者も30日前までに書面で通知することにより、本契約を終了できます」という意味になります。
termination clauseを確認するときは、終了できる理由、通知方法、通知期間、終了後も残る義務をまとめて確認することが大切です。
特に秘密保持、支払い、知的財産に関する規定は、契約終了後にも有効となる場合があります。
条項の言い換えと略称の注意点
続いては条項の言い換えと略称の注意点を確認していきます。
文書の種類に応じた自然な言い換え
条項を英訳するときは、原文が契約書なのか、社内規程なのか、利用規約なのかを考える必要があります。
契約書の個別項目ならclause、規約に置かれた定めならprovision、法律や規程の第何条ならarticleが候補になります。
取引上の条件をやわらかく説明するメールでは、termやconditionのほうが自然な場合もあります。
たとえば、「この条項は受け入れられません」をThe clause is unacceptable.とすると強い印象になることがあります。
交渉中なら、We would like to discuss this term further.のように表現すると、協議の余地を残せるでしょう。
略称や短縮形が使える場面
clauseに広く定着した正式な略称はほとんどありません。
社内メモでcl.と短縮する例はありますが、相手先に送る正式なメールや契約書では避けたほうが無難です。
一方、関連する契約文書にはNDA、MSA、SOW、TOSなどの略称があります。
MSAはMaster Services Agreementで基本契約、SOWはStatement of Workで作業範囲記述書、TOSはTerms of Serviceで利用規約を意味します。
| 略称 | 正式名称 | 日本語の意味 |
|---|---|---|
| NDA | Non Disclosure Agreement | 秘密保持契約 |
| MSA | Master Services Agreement | 基本契約書 |
| SOW | Statement of Work | 業務範囲記述書 |
| TOS | Terms of Service | 利用規約 |
略称は相手が意味を理解している前提で使うと便利ですが、初出時には正式名称を示すと認識違いを防げます。
スラングや口語表現を避ける理由
条項を表す場面では、スラングや砕けすぎた短縮形は基本的に不要です。
契約は権利と義務に関わる文書のため、意味が曖昧な表現はトラブルにつながる可能性があります。
口語ではthe fine printという表現を使うことがあります。
これは契約書などに小さな文字で書かれた細かな条件や、見落としやすい重要事項を指す言い回しです。
ただし、the fine printは正式な条項名ではなく、少し注意を促すニュアンスを含む表現です。
正式な文書や重要なメールでは、clause、provision、termsといった標準的な語を使うのが安心でしょう。
条項の英語表記に関するまとめ
条項の英語表記として最も基本になるのはclauseです。
読み方はクローズに近く、契約書内の個別の定めを指す際に広く使えます。
規定全般や法律上の定めにはprovision、第何条という構成にはarticle、取引条件全般にはtermが適しています。
秘密保持条項はconfidentiality clause、解約条項はtermination clause、責任制限条項はlimitation of liability clauseのように、内容を示す語と組み合わせて使います。
ビジネスメールでは、条項の追加、修正、確認を依頼する際に、条番号や対象範囲を具体的に示すと伝達がスムーズになります。
clauseの略称やスラングに頼るより、文書の目的に合った正式な表現を選ぶことが、契約実務での誤解を減らすポイントです。