スマートフォン・電気自動車・家庭用蓄電池など、電池はあらゆる分野で使われる時代になりました。
電池を選ぶうえで重要な指標のひとつが「エネルギー密度」であり、リチウムイオン電池・全固体電池・ニッケル水素電池など種類によって大きく異なります。
本記事では主要な電池のエネルギー密度をランキング形式で比較し、各電池の特徴・技術動向・用途についてわかりやすく解説していきます。
電池選定や次世代蓄電技術の理解に役立つ情報として、ぜひ参考にしてください。
エネルギー密度の電池ランキングでは全固体電池が最上位に位置する
それではまず、主要電池のエネルギー密度ランキングの全体像について解説していきます。
電池のエネルギー密度ランキングは上位から順に、全固体電池・リチウムイオン電池・ニッケル水素電池・鉛蓄電池・ニカド電池という順序が一般的です。
全固体電池:400〜500Wh/kg(開発目標値・実用化前)
リチウムイオン電池:150〜300Wh/kg(現在の主流)
ニッケル水素電池:60〜120Wh/kg
鉛蓄電池:30〜50Wh/kg
ニカド電池:40〜60Wh/kg
リチウムイオン電池は現在実用化されている電池の中で最高水準のエネルギー密度を誇ります。
電池のエネルギー密度は理論値と実用値が異なり、実際の製品ではセルの構造・パッケージング・安全機構の追加によって理論値を下回ることが一般的です。
次世代の全固体電池は現在のリチウムイオン電池の1.5〜2倍以上のエネルギー密度を目指しており、EV・電子機器・定置用蓄電池への応用が期待されています。
リチウムイオン電池のエネルギー密度と特徴
続いては、現在もっとも広く使われているリチウムイオン電池のエネルギー密度と特徴を確認していきます。
リチウムイオン電池は1991年にソニーが世界初の商業化を実現し、その後スマートフォン・ノートPC・EVなどの普及を牽引してきました。
リチウムイオン電池の種類とエネルギー密度
リチウムイオン電池はその正極材料によって複数の種類に分類されます。
| 種類 | 正極材料 | 質量エネルギー密度 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| NCM系 | ニッケル・コバルト・マンガン | 200〜300Wh/kg | EV・パワーツール |
| NCA系 | ニッケル・コバルト・アルミ | 220〜280Wh/kg | EV(テスラ等) |
| LFP系 | リン酸鉄リチウム | 120〜180Wh/kg | EV・定置用蓄電池 |
| LCO系 | コバルト酸リチウム | 150〜200Wh/kg | スマートフォン・PC |
NCM・NCA系はエネルギー密度が高くEVの長航続距離化に適する一方、LFP系は安全性・長寿命・低コストという利点があります。
中国の電池メーカーBYDや大手EV向け供給ではLFP系の採用が増えており、コスト競争力の高さが注目されています。
リチウムイオン電池の技術進化
リチウムイオン電池のエネルギー密度は過去30年間で約3〜4倍に向上しており、現在も年率3〜5%程度の改善が続いています。
シリコン系負極・高ニッケル正極・電解液の改良などの技術開発が進んでおり、近い将来400Wh/kgを超えるリチウムイオン電池の実用化が見込まれています。
ニッケル水素電池・鉛蓄電池のエネルギー密度比較
続いては、ニッケル水素電池・鉛蓄電池のエネルギー密度と特徴を確認していきます。
これらの電池はリチウムイオン電池に比べてエネルギー密度では劣るものの、それぞれ独自の強みを持ちます。
ニッケル水素電池の特性
ニッケル水素電池は水素吸蔵合金を負極に使う電池で、ハイブリッド自動車(HEV)の主要電池として広く普及しています。
質量エネルギー密度は60〜120Wh/kgとリチウムイオン電池より低いですが、充放電サイクル寿命が長く安全性が高いという特徴があります。
トヨタのプリウスなどHEV向けニッケル水素電池は、急加速・回生充電の繰り返しにも耐える高い出力密度と耐久性を持っています。
鉛蓄電池の特性と用途
鉛蓄電池はもっとも歴史の長い蓄電池であり、自動車のスターターバッテリー・UPS(無停電電源)・フォークリフトなどに今も広く使われています。
エネルギー密度は30〜50Wh/kgと低いですが、コストが安く・信頼性が高く・大電流放電が得意という利点があります。
鉛蓄電池は電池の中で最もリサイクル率が高く(約97〜99%)、環境面での優位性も持っています。
次世代電池の技術動向とエネルギー密度の展望
続いては、全固体電池をはじめとする次世代電池の技術動向とエネルギー密度の将来展望を解説していきます。
2020年代以降、電池技術の進化は急速であり、エネルギー密度の飛躍的な向上が期待されています。
全固体電池の開発状況
全固体電池は電解質を液体から固体(酸化物・硫化物・ポリマーなど)に変えることで、エネルギー密度・安全性・長寿命を同時に向上させる次世代電池です。
理論上の質量エネルギー密度は400〜500Wh/kgを超えるとされており、現行のリチウムイオン電池の1.5〜2倍以上のエネルギー密度が見込まれます。
トヨタ・パナソニック・Samsung SDI・CATLなどの大手メーカーが全固体電池の量産実用化を目指して開発競争を繰り広げています。
リチウム硫黄・リチウム空気電池の可能性
さらに将来の電池技術として、リチウム硫黄電池(理論値約2600Wh/kg)・リチウム空気電池(理論値約3500Wh/kg)が研究段階にあります。
これらが実用化されれば現在のリチウムイオン電池を大幅に超えるエネルギー密度が得られますが、サイクル寿命・出力密度・製造コストなどの課題解決が実用化のカギとなります。
電池技術の革新はEV・スマートグリッド・航空機電動化など多くの産業分野に革命をもたらす可能性を秘めています。
まとめ
本記事では、主要電池のエネルギー密度ランキング・各電池の特徴・技術動向について幅広く解説しました。
現在の実用電池ではリチウムイオン電池が最高水準のエネルギー密度(150〜300Wh/kg)を持ち、EV・スマートフォン・蓄電システムの主役となっています。
全固体電池をはじめとする次世代電池は400Wh/kg超のエネルギー密度を目指しており、実用化に向けた開発が加速しています。
電池技術の進化とエネルギー密度の向上は、脱炭素社会の実現に向けた最重要技術課題のひとつであり続けるでしょう。