電気回路を学んでいると、抵抗と対になるように登場するコンダクタンスという言葉に出会います。
名称は聞いたことがあっても、抵抗との違い、単位、計算式までを一度に整理できている人は少なくないでしょう。
コンダクタンスは、電流の流れやすさを数値で表す重要な量です。
オームの法則を別の見方で扱えるため、並列回路の計算や電子回路の設計、半導体の特性評価にも役立ちます。
この記事では、コンダクタンスの意味と記号G、抵抗との関係を基礎から順番に解説します。
コンダクタンスの意味と基本概念

それではまずコンダクタンスの意味と基本概念について解説していきます。
電流の流れやすさを表す物理量
コンダクタンスとは、導体や回路における電流の流れやすさを示す物理量です。
英語ではconductanceと書き、回路図や計算式では一般に記号Gで表します。
抵抗が大きい部品では電流が流れにくくなりますが、コンダクタンスは小さくなります。
反対に、抵抗が小さくて電流が通りやすい状態では、コンダクタンスは大きな値です。
水道管にたとえるなら、抵抗は水の通りにくさ、コンダクタンスは水の通りやすさに相当します。
太く短い管ほど水がよく流れるように、太く短い導線ほどコンダクタンスが大きくなる傾向があります。
コンダクタンスは抵抗の逆数です。
抵抗値だけでは把握しにくい電流の通しやすさを、直接的に表現したい場面で便利な指標になります。
記号Gと回路での位置づけ
コンダクタンスの記号はGです。
これは電気伝導を意味するconductanceの頭文字ではなく、歴史的な表記慣習として定着した記号と考えるとよいでしょう。
電圧をV、電流をI、抵抗をRとすると、オームの法則はI=V÷Rで表されます。
ここでG=1÷Rを用いると、式はI=GVと書き換えられます。
つまり、コンダクタンスを使うと、電流は電圧とコンダクタンスの積として理解できます。
増幅回路やトランジスタの説明では、この表し方が特に重要です。
コンダクタンスとコンダクティビティの違い
コンダクタンスと混同されやすい言葉に、導電率があります。
導電率はコンダクティビティとも呼ばれ、材料そのものが電気を通す性質を表す量です。
一方のコンダクタンスは、材料の種類だけでなく、導線の長さや断面積、部品の形状も含めた回路全体の通しやすさを表します。
同じ銅線でも、長さが変われば抵抗とコンダクタンスは変化します。
材料固有の性質を見るなら導電率、実際の部品や回路で流れる電流を考えるならコンダクタンスという使い分けです。
コンダクタンスの単位と換算
続いてはコンダクタンスの単位と換算を確認していきます。
ジーメンスという標準単位
コンダクタンスのSI単位はジーメンスです。
単位記号はSで、siemensに由来します。
1ジーメンスは、1ボルトの電圧を加えたときに1アンペアの電流が流れるコンダクタンスです。
単位の関係はA÷Vであり、オームの逆数でもあります。
そのため、1Sは1Ωの逆数に等しくなります。
ジーメンスはオームの反対側にある単位と覚えると、抵抗との関係を整理しやすいでしょう。
コンダクタンスの単位関係です。
1S=1A÷V=1Ωの逆数
抵抗が1Ωなら、コンダクタンスは1Sです。
ミリジーメンスとマイクロジーメンス
実際の測定や設計では、ジーメンスより小さな単位を使うことが多くあります。
代表的なのはミリジーメンスとマイクロジーメンスです。
ミリジーメンスはmSと書き、1mSは1000分の1Sです。
マイクロジーメンスはμSと書き、1μSは100万分の1Sに相当します。
高抵抗の回路、センサー、絶縁状態の評価ではμSやさらに小さい単位が使われる場合があります。
| 単位 | 記号 | ジーメンス換算 | 対応する抵抗値の目安 |
|---|---|---|---|
| ジーメンス | S | 1S | 1Ω |
| ミリジーメンス | mS | 0.001S | 1kΩ |
| マイクロジーメンス | μS | 0.000001S | 1MΩ |
| ナノジーメンス | nS | 0.000000001S | 1GΩ |
旧単位モーの扱い
古い資料では、コンダクタンスの単位としてモーが使われていることがあります。
モーはohmを逆向きに綴ったmhoに由来する呼び方です。
現在は国際単位系でジーメンスを使うのが一般的であり、技術文書や仕様書でもSが基本となります。
ただし、海外の古い回路図、保守資料、測定器の資料ではmhoという表記が残っているかもしれません。
値としては1mho=1Sなので、単位名が違っても換算で困ることはありません。
抵抗との関係と計算式
続いては抵抗との関係と計算式を確認していきます。
抵抗の逆数としての求め方
コンダクタンスGは、抵抗Rの逆数で求められます。
式はG=1÷Rです。
抵抗値の単位をΩで入力すれば、コンダクタンスはSで得られます。
たとえば抵抗が100Ωなら、コンダクタンスは1÷100となり、0.01Sです。
0.01Sは10mSとも表せます。
抵抗値が大きくなるほどコンダクタンスは急激に小さくなる点が重要です。
抵抗100Ωのコンダクタンスを求める例です。
G=1÷100=0.01S
0.01S=10mSとなります。
電圧と電流から求める方法
オームの法則を利用すれば、電圧と電流からコンダクタンスを求めることもできます。
式はG=I÷Vです。
たとえば5Vを加えた回路に0.02Aの電流が流れた場合、Gは0.02÷5で0.004Sです。
これは4mSにあたります。
この方法は、抵抗値が直接わからない回路や、実測データから通電特性を確認したい場合に便利です。
ただし、電圧と電流が直線的に比例しない素子では、測定する動作点によって値が変わることがあります。
抵抗率と形状からの考え方
均一な導体では、抵抗は材料の抵抗率、長さ、断面積によって決まります。
導体の長さをL、断面積をA、抵抗率をρとすると、抵抗はρL÷Aで表されます。
この式の逆数を取ると、コンダクタンスはA÷ρLです。
つまり、断面積が大きいほどコンダクタンスは増え、長さが長いほど小さくなります。
太く短い配線ほど電流を流しやすい理由は、この関係式からも説明できます。
配線のコンダクタンスは材料だけで決まりません。
断面積、長さ、温度、接触部の状態まで影響するため、実務では配線全体として評価する視点が必要です。
直列回路と並列回路の扱い
続いては直列回路と並列回路における扱いを確認していきます。
直列接続での逆数計算
抵抗を直列につなぐ場合は、抵抗値をそのまま足し算します。
コンダクタンスに変換して考える場合は、単純な足し算にはなりません。
直列回路の合成コンダクタンスは、各コンダクタンスの逆数を足してから、さらに逆数を取って求めます。
これは直列回路では電流の通り道が一つであり、全体の流れやすさが最も通りにくい部分の影響を受けるためです。
直列抵抗の計算では、先に抵抗値を合計してから逆数を取る方法がわかりやすいでしょう。
並列接続での足し算
コンダクタンスが特に便利になるのは並列回路です。
並列につないだ各枝には同じ電圧が加わり、それぞれの電流が合流します。
そのため合成コンダクタンスは、各コンダクタンスをそのまま足して求められます。
式はG=G1+G2+G3という形です。
並列回路ではコンダクタンスの加算がそのまま使えるため、複数の抵抗を扱う計算が見通しよくなります。
1kΩと2kΩの抵抗を並列接続する例です。
1kΩは1mS、2kΩは0.5mSです。
合成コンダクタンスは1.5mSとなり、合成抵抗は約667Ωです。
回路設計での判断ポイント
分圧回路やプルアップ抵抗、センサー入力回路では、抵抗値だけでなく合成コンダクタンスを意識すると電流経路を把握しやすくなります。
とくに複数の入力が接続される回路では、想定外の並列経路によって合成抵抗が下がる場合があります。
合成抵抗が下がれば、コンダクタンスは上がります。
その結果、消費電流が増えたり、電圧レベルが変化したりすることもあるでしょう。
抵抗の公差も考慮し、最小抵抗時に流れる電流を確認する姿勢が安全です。
半導体と交流回路におけるコンダクタンス
続いては半導体と交流回路におけるコンダクタンスを確認していきます。
トランジスタの相互コンダクタンス
半導体の分野では、相互コンダクタンスという用語も使われます。
これは入力電圧の変化に対して、出力電流がどれだけ変化するかを示す量です。
一般にgmという記号で表され、単位は通常のコンダクタンスと同じSです。
たとえばMOSFETでは、ゲート電圧を少し変えたときにドレイン電流がどの程度変わるかを表します。
gmが大きい素子は、入力信号の小さな変化を電流変化へ結び付けやすく、増幅性能に関係します。
通常の抵抗の逆数としてのGと、素子の増幅特性を示すgmは意味が異なるため、記号の添え字まで確認しましょう。
交流回路におけるアドミタンス
交流回路では、抵抗だけでなくコイルやコンデンサの影響も考える必要があります。
このとき、インピーダンスの逆数としてアドミタンスを用います。
アドミタンスは一般にYで表され、実数成分がコンダクタンスG、虚数成分がサセプタンスBです。
抵抗成分は電力を熱として消費しますが、コイルやコンデンサの成分は電気エネルギーと磁気エネルギーを一時的に蓄えます。
そのため、交流のコンダクタンスは単なる抵抗の逆数より広い文脈で扱われることがあります。
| 用語 | 主な記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 抵抗 | R | 直流の流れにくさ | Ω |
| コンダクタンス | G | 直流の流れやすさ | S |
| インピーダンス | Z | 交流における流れにくさ | Ω |
| アドミタンス | Y | 交流における流れやすさ | S |
漏れ電流と絶縁評価への活用
絶縁材料や基板の評価では、非常に小さなコンダクタンスが問題になることがあります。
本来は電流を通さないはずの部分でも、湿気、汚れ、劣化、表面結露などによって微小な漏れ電流が生じる場合があります。
このような状態では抵抗が低下し、コンダクタンスが増加します。
わずかなコンダクタンスの増加が、待機電流や誤動作の原因になることもあります。
高インピーダンス回路では、測定器の入力抵抗やプローブ表面の汚れさえ影響しうるため、測定環境の管理が欠かせません。
微小電流を扱う回路では、理論値だけで判断しないことが大切です。
湿度や汚れ、基板表面の残渣による漏れ経路も、実質的なコンダクタンスとして確認します。
コンダクタンスの測定方法と注意点
続いてはコンダクタンスの測定方法と注意点を確認していきます。
テスターによる抵抗測定からの換算
もっとも身近な方法は、デジタルマルチメーターで抵抗を測り、逆数を取ってコンダクタンスへ換算する方法です。
たとえば表示値が10kΩなら、コンダクタンスは0.1mSです。
測定対象が回路基板上にある場合、他の部品が並列につながっていると、単体の抵抗値とは異なる値になることがあります。
正確に確認したいときは、電源を切り、必要に応じて部品の片側を回路から切り離して測定します。
通電したまま抵抗レンジで測るのは故障や誤測定の原因になるため避けましょう。
電圧と電流の実測による算出
実際の動作状態でコンダクタンスを知りたい場合は、対象に加わる電圧と流れる電流を測定します。
その後、G=I÷Vで算出します。
この方法では、温度上昇や負荷条件を含めた実際の値を確認できます。
一方で、測定器を接続したことで回路状態が変わる可能性には注意が必要です。
特に高抵抗回路では、電流計や電圧計の入力特性が測定対象へ影響することがあります。
測定器も回路の一部になるという意識を持つと、測定ミスを減らせます。
温度と接触抵抗の影響
金属の抵抗は温度によって変化するため、コンダクタンスも温度の影響を受けます。
多くの金属では温度が上がると抵抗が増え、コンダクタンスは下がります。
また、端子の酸化、コネクターの緩み、はんだ不良などによる接触抵抗も見逃せません。
測定値が不安定なときは、部品そのものではなく接点や測定リードを疑うことも必要でしょう。
低抵抗を高精度に測る場合には、リード線抵抗の影響を抑えられる四端子測定が有効です。
コンダクタンスの要点
ここまでの内容をまとめます。
コンダクタンスは、回路や導体における電流の流れやすさを表す物理量です。
記号はG、単位はジーメンスSであり、抵抗Rとの関係はG=1÷Rになります。
抵抗が小さいほどコンダクタンスは大きく、抵抗が大きいほどコンダクタンスは小さくなります。
並列回路では各コンダクタンスを足し算できるため、複数の抵抗を含む回路の計算に便利です。
半導体では相互コンダクタンスgm、交流回路ではアドミタンスの実数成分としても登場します。
測定時には温度、接触抵抗、周辺回路の並列経路、測定器の影響まで考慮することが大切です。
抵抗の逆数という基本を押さえることが、コンダクタンスを正しく使いこなす第一歩になるでしょう。