稼働率を正確に計算することは、製造現場の生産管理やITシステムの信頼性評価において非常に重要です。
しかし稼働率の計算式には複数のパターンがあり、分野や目的によって計算方法が異なるため、どの式をどの場面で使えばよいか迷う方も多いでしょう。
本記事では稼働率の計算式と求め方を基本から丁寧に解説し、時間稼働率・性能稼働率・システム稼働率の計算方法・エクセルを使った計算方法・計算ツールの活用まで詳しくお伝えします。
稼働率の計算式と基本的な求め方
それではまず、稼働率の計算式と基本的な求め方について解説していきます。
稼働率の最も基本的な計算式は「稼働率(%)=実稼働時間 ÷ 計画稼働時間 × 100」であり、分母に置く「利用可能時間・計画時間」と分子の「実稼働時間」の定義が計算精度を左右します。
稼働率の基本計算式
稼働率(%)=(実稼働時間 ÷ 計画稼働時間)× 100
具体例:計画稼働時間480分・実稼働時間432分の場合
稼働率 =(432 ÷ 480)× 100 = 90.0%
停止時間(ロス)= 480 − 432 = 48分(10%のロス)
計算に必要なデータの収集方法
稼働率を正確に計算するには、計画稼働時間と実稼働時間(または停止時間)のデータを正確に収集することが前提となります。
製造現場では設備の稼働状態をセンサー・PLCで自動記録する「設備稼働監視システム」の導入が増えており、リアルタイムで稼働率を計算・可視化できる環境が整いつつあります。
手動での記録の場合は「稼働日報」「設備点検記録」などの帳票に開始・停止時刻と停止理由を記録し、集計して稼働率を算出します。
稼働率の計算精度はデータ収集の精度に依存するため、測定方法・記録ルール・集計方法を標準化することが正確な稼働率管理の基盤となります。
稼働率計算で注意すべき分母の定義
稼働率の計算でよくある混乱の原因が「分母(利用可能時間)の定義」です。
暦時間(24時間×日数)を分母にする場合・就業時間を分母にする場合・計画生産時間を分母にする場合など、分母の定義によって同じ設備でも稼働率の数値が大きく変わります。
社内での稼働率比較・目標設定では必ず同一の定義を用いることが、正確な評価と改善活動につながります。
時間稼働率と性能稼働率の計算方法
続いては、時間稼働率と性能稼働率の計算方法について確認していきます。
製造業では稼働率をより精緻に分析するために、時間稼働率と性能稼働率を区別して計算することが重要です。
時間稼働率の計算式と例
時間稼働率は計画時間からダウンタイム(故障・段取り・チョコ停などの停止時間)を引いた実稼働時間の割合です。
時間稼働率の計算式
時間稼働率(%)=(計画稼働時間 − 停止時間)÷ 計画稼働時間 × 100
具体例:計画稼働時間480分・停止時間(故障30分+段取り20分)50分の場合
時間稼働率 =(480 − 50)÷ 480 × 100 = 430 ÷ 480 × 100 ≒ 89.6%
性能稼働率の計算式と例
性能稼働率は設備が実際に動いている時間の中で、設計(理論)速度に対してどれだけの速度で生産できているかを示します。
性能稼働率の計算式
性能稼働率(%)=(理論サイクルタイム × 生産数量)÷ 実稼働時間 × 100
具体例:理論サイクルタイム1分/個・生産数量400個・実稼働時間430分の場合
性能稼働率 =(1 × 400)÷ 430 × 100 ≒ 93.0%
時間稼働率と性能稼働率を分けて計算することで、稼働率低下の原因が「停止時間の多さ」にあるのか「稼働中の速度低下」にあるのかを区別でき、的確な改善活動につながります。
設備総合効率(OEE)の計算式
設備総合効率(OEE)は時間稼働率・性能稼働率・良品率の3指標を組み合わせた総合的な設備効率指標です。
OEEの計算式
OEE(%)= 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
上記の例で良品率98%の場合
OEE = 89.6% × 93.0% × 98% ≒ 81.6%
世界クラスのOEEは85%以上とされています。
システム稼働率の計算方法(IT・システム管理向け)
続いては、システム稼働率の計算方法について確認していきます。
IT・システム管理における稼働率計算は製造業と異なる考え方が必要です。
システム稼働率の基本計算式
システム稼働率は一般的に以下の式で計算されます。
システム稼働率の計算式
システム稼働率(%)=(稼働時間 ÷ 総運用時間)× 100
または:稼働率 = MTBF ÷(MTBF + MTTR)
例:1ヶ月(720時間)のうち停止時間が2時間だった場合
稼働率 =(720 − 2)÷ 720 × 100 = 718 ÷ 720 × 100 ≒ 99.72%
直列・並列システムの稼働率計算
複数コンポーネントからなるシステムの稼働率計算は接続構成によって異なります。
| 接続構成 | 計算式 | 具体例(各コンポーネント稼働率0.99) |
|---|---|---|
| 直列(2コンポーネント) | A × B | 0.99 × 0.99 = 0.9801(98.01%) |
| 並列(2コンポーネント) | 1 −(1−A)×(1−B) | 1 −(0.01 × 0.01)= 0.9999(99.99%) |
並列(冗長化)構成にすることで稼働率が大幅に向上することがこの計算から明確にわかり、システムの冗長化投資判断を定量的に行う際の重要な計算根拠となります。
エクセルを使った稼働率計算の方法
続いては、エクセルを使った稼働率計算の方法について確認していきます。
実務での稼働率管理にはエクセルを活用した計算・集計・グラフ化が非常に便利です。
エクセルでの基本的な稼働率計算シートの作り方
エクセルで稼働率計算シートを作成する基本的な構成として、A列に日付・B列に計画稼働時間・C列に停止時間・D列に実稼働時間(B−C)・E列に稼働率(D/B×100)を配置する方法が一般的です。
E列の稼働率計算式は「=D2/B2*100」として入力し、下方向にコピーすることで日別稼働率が自動計算されます。
条件付き書式を活用して稼働率が目標値(例:90%)を下回ったセルを赤色で強調表示すると、問題のある日や設備を視覚的に素早く把握できます。
エクセルでのOEE計算シートの構築
OEE(設備総合効率)をエクセルで計算する場合は時間稼働率・性能稼働率・良品率の3シートを作成し、最終シートでOEE=時間稼働率×性能稼働率×良品率を計算する構成が管理しやすいでしょう。
エクセルのピボットテーブル機能を活用することで設備別・月別・要因別など多角的な稼働率分析が容易になり、改善活動の優先順位付けに役立てることができます。
稼働率計算ツールの活用と自動化
近年はIoT・センサーを活用した設備稼働監視システムが普及し、PLCやスマートデバイスから自動でデータを収集・計算・ダッシュボード表示する仕組みが中小製造業でも導入しやすくなっています。
クラウド型の稼働率管理ツールを活用することで、手入力によるデータ収集の工数削減・リアルタイムでの稼働率確認・異常発生時の即時アラートなどが実現し、稼働率管理の精度と効率が大幅に向上します。
まとめ
稼働率の計算は「実稼働時間 ÷ 計画稼働時間 × 100」が基本式ですが、時間稼働率・性能稼働率・システム稼働率など目的に応じた計算式の使い分けが重要です。
製造業では時間稼働率×性能稼働率×良品率のOEEとして総合評価し、IT分野ではMTBFとMTTRを活用したシステム稼働率として評価します。
エクセルや稼働率管理ツールを活用したデータの見える化・自動計算によって、稼働率の継続的な改善活動を効率的に進めることができます。
正確なデータ収集と一貫した定義のもとで稼働率を計算・管理することが、生産性向上とシステム信頼性の改善につながる第一歩です。