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励磁突入電流の抑制装置とは?種類や原理も!(制御装置:サイリスタ:投入タイミング:電圧制御:リレー保護など)

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励磁突入電流は変圧器投入時に発生する過渡的な大電流であり、電力系統の安定運用を脅かす重大な課題です。

この問題に対処するため、様々な専用の抑制装置が開発・製品化されています。

本記事では、励磁突入電流抑制装置の種類・動作原理・サイリスタを使った制御方式・リレー保護との連携まで詳しく解説します。

励磁突入電流抑制装置とは何か?基本的な概要

それではまず、励磁突入電流抑制装置の基本的な概要について解説していきます。

励磁突入電流抑制装置とは、変圧器の電源投入時に発生する励磁突入電流を電子的・機械的に制御・抑制するための専用装置です。

主要な装置タイプには、投入角制御装置・直列抵抗バイパス方式装置・ソフトスタート装置・予励磁制御装置などがあります。

励磁突入電流抑制装置の導入効果として、保護リレーの誤動作防止・系統電圧変動の抑制・変圧器機械的ストレスの軽減・系統に接続された他機器への影響低減が挙げられます。

これらの効果は系統の安定性と変圧器の寿命延長に直接つながる重要な価値です。

投入角制御装置(Controlled Switching Device)

投入角制御装置は、変圧器投入時の電源電圧位相を高精度に検出し、励磁突入電流が最小になる最適位相でサイリスタまたは高速遮断器を動作させる装置です。

装置の主要構成要素として、位相検出回路・残留磁束推定回路・制御演算部・サイリスタまたは真空遮断器(VCB)の高速制御部があります。

最適投入角は残留磁束の大きさと向きに応じてリアルタイムで計算されるため、高度な演算処理能力が必要です。

ABB・三菱電機・日立などの大手電機メーカーから製品化されており、大容量変圧器への採用実績が豊富です。

サイリスタ式軟投入装置の原理

サイリスタ式軟投入装置(サイリスタソフトスタータ)は、変圧器の一次側にサイリスタ(SCR)を直列に接続し、点弧角(firing angle)を制御することで投入時の電流を制限する装置です。

投入初期は点弧角を遅らせて実効電圧を低くし、時間とともに点弧角を進めて電圧を徐々に定格値まで引き上げます。

サイリスタは半導体スイッチングデバイスであり、高速・無接点での制御が可能なため、耐久性・信頼性に優れています。

サイリスタ軟投入の動作イメージ

投入開始:点弧角=最大(実効電圧=最小)

→ 徐々に点弧角を減少 → 実効電圧が上昇

→ 一定時間後に点弧角=最小(実効電圧=定格電圧)

→ バイパス接触器が閉じてサイリスタをバイパス(通常運転へ)

直列抵抗バイパス方式装置の構成

直列抵抗バイパス方式は、起動時に直列抵抗を挿入して突入電流を制限し、定常状態になったら接触器(バイパス)でこの抵抗を短絡する方式です。

装置の構成はシンプルであり、直列抵抗器・バイパス接触器・タイマー回路(または電流・電圧監視回路)から成ります。

シンプルな構造であるため保守性に優れ、中小容量の変圧器に対してコスト効果の高い解決策となります。

抑制装置の選定と設計上のポイント

続いては、抑制装置の選定と設計上のポイントについて確認していきます。

変圧器容量と系統条件に基づく装置選定

励磁突入電流抑制装置の選定は、変圧器の容量・系統のインピーダンス・保護方式・予算・メンテナンス体制を総合的に考慮して行います。

変圧器容量が大きいほど系統への影響が大きくなるため、より高度な抑制装置の導入が正当化されます。

系統インピーダンスが低い(強固な系統)場合は励磁突入電流が大きくなりやすいため、より強力な抑制対策が必要です。

リレー保護との連携設計

抑制装置の設計においては、保護リレーシステムとの連携を考慮することが重要です。

抑制装置が動作中(起動中)は過電流リレーや差動リレーへの入力を一時的にロック(抑止)する「ロックアウト機能」を設けるケースがあります。

ただし保護のロックは過度に行うと内部故障の検出遅延につながるため、ロック時間の設定は慎重に行う必要があります。

保護リレーの第2高調波抑制機能と抑制装置の組み合わせが現実的な解決策として広く採用されています。

装置の設置・試運転時の確認事項

励磁突入電流抑制装置の設置・試運転では次の確認が必要です。

投入試験での実際の突入電流波形・ピーク値・持続時間の測定・設計値との比較を行います。

保護リレーとの連携動作確認(抑制装置動作中にリレーが誤動作しないことの確認)も必須項目です。

装置のパラメータ設定(バイパスタイミング・電流閾値など)の最適化も試運転段階で実施します。

まとめ

本記事では、励磁突入電流抑制装置の種類・投入角制御装置・サイリスタ軟投入装置・直列抵抗バイパス方式の原理・選定ポイント・リレー保護との連携まで詳しく解説しました。

励磁突入電流抑制装置は変圧器の安定投入・保護システムの信頼性向上・系統電圧品質の確保に欠かせない重要な設備です。

変圧器の容量・系統条件・保護方式に応じた適切な装置を選定し、正しく設置・調整することで最大の効果を発揮できるでしょう。

本記事を参考に、励磁突入電流抑制装置への理解と実践に役立てていただければ幸いです。