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ステンレスに磁石がつかない理由は?種類と磁性の関係!(オーステナイト系:フェライト系:304:430:18-8ステンレスなど)

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「ステンレスに磁石をつけようとしたらつかなかった」という経験はないでしょうか。

一方で、ステンレスでも磁石がつくものもあり、「なぜ?」と疑問に思う方も多いはずです。

この記事では、ステンレスに磁石がつかない理由と種類ごとの磁性の違いを、オーステナイト系・フェライト系・304・430・18-8ステンレスのポイントを交えてわかりやすく解説します。

ステンレスの特性を正しく理解したい方や、材料選定の参考にしたい方にぜひ読んでいただきたい内容です。

ステンレスに磁石がつかない理由を結論から解説

それではまず、ステンレスに磁石がつかない理由の結論から解説していきます。

一言でまとめると、磁石がつかないステンレスは「オーステナイト系」と呼ばれる組織構造を持ち、この構造が非磁性(磁石に反応しない)特性をもたらしているからです。

ステンレスと磁性の関係の基本:

・オーステナイト系ステンレス(SUS304など)→ 非磁性・磁石がつかない

・フェライト系ステンレス(SUS430など)→ 磁性あり・磁石がつく

・マルテンサイト系ステンレス(SUS410など)→ 磁性あり・磁石がつく

ステンレスは「鉄(Fe)にクロム(Cr)などを添加した合金」ですが、添加する元素の種類と量によって金属の結晶構造(相)が変わり、磁性が大きく異なってきます。

「ステンレスは全部磁石につかない」と思っている方は多いですが、実際にはステンレスの種類によって磁性は大きく異なるのです。

オーステナイト相とは何か

鉄(Fe)は温度や添加元素によって結晶構造(相)が変化します。

ニッケル(Ni)やマンガン(Mn)などの「オーステナイト安定化元素」を多く添加すると、常温でも面心立方格子(FCC)構造の「オーステナイト相」が安定的に存在するようになります。

このオーステナイト相は磁性を持たない(非磁性)ため、オーステナイト系ステンレスは磁石に反応しないのです。

SUS304(18-8ステンレスとも呼ばれる)はクロム18%・ニッケル8%を含む代表的なオーステナイト系ステンレスです。

フェライト相と磁性の関係

一方、クロム(Cr)のみを添加しニッケルを含まないステンレスでは、体心立方格子(BCC)構造の「フェライト相」が安定化します。

フェライト相は磁性を持つため、フェライト系ステンレスは磁石に引き寄せられます。

SUS430はクロム17〜18%を含む代表的なフェライト系ステンレスであり、家庭用のシンクや電気ポットなどに広く使われています。

フェライト系は磁石につくことがひとつの目安になるため、材質確認の際に活用できるでしょう。

18-8ステンレスとは何か

「18-8ステンレス」とは、クロムを18%・ニッケルを8%含むオーステナイト系ステンレスの通称で、SUS304がこれに該当します。

耐食性・加工性・溶接性に優れており、食器・調理器具・建築材料・医療機器など非常に幅広い用途で使われています。

磁石がつかないため、磁気の影響を避けたい用途にも適しているでしょう。

ステンレスの種類と磁性の特徴を比較

続いては、ステンレスの種類と磁性の特徴を比較して確認していきます。

種類 代表的な規格 主な添加元素 磁性 主な用途
オーステナイト系 SUS304・SUS316 Cr18%・Ni8%以上 非磁性(磁石つかない) 食器・医療器具・建築
フェライト系 SUS430・SUS444 Cr17〜27%(Niなし) 磁性あり(磁石つく) 家電・調理器具・自動車部品
マルテンサイト系 SUS410・SUS420 Cr12〜18% 磁性あり(磁石つく) 刃物・ポンプ・バルブ
二相系(デュプレックス) SUS329J1 Cr・Ni・Mo 弱い磁性 化学プラント・海洋構造物

この比較表からもわかるように、磁石でつくかどうかはステンレスの種類によって明確に異なります。

加工によるオーステナイト系の磁性変化

本来非磁性のオーステナイト系ステンレスでも、冷間加工(プレス・曲げ・引き抜きなど)を施すと一部がマルテンサイト相に変態し、弱い磁性を帯びることがあります。

これを「加工誘起マルテンサイト変態」と呼び、SUS304などで見られる現象です。

曲げ加工を施したSUS304のスプーンの加工部分に磁石がわずかにつくのは、このメカニズムによるものです。

完全な非磁性が必要な用途では、加工硬化の影響を受けにくいSUS316Lや高ニッケル系ステンレスを選ぶとよいでしょう。

磁石でステンレスの種類を簡易判定する方法

磁石を使ったステンレスの種類の簡易判定は、現場でよく用いられる実用的な方法です。

磁石がまったくつかない → オーステナイト系(SUS304など)の可能性が高い。

磁石がつく → フェライト系またはマルテンサイト系の可能性が高い。

ただし、加工されたSUS304では弱い磁性が出ることもあるため、正確な材質確認には成分分析や刻印・証明書の確認が必要です。

ステンレスの磁性まとめ

この記事では、ステンレスに磁石がつかない理由・オーステナイト系とフェライト系の違い・各種ステンレスの磁性特性・加工による磁性変化について詳しく解説しました。

磁石がつかないのはオーステナイト系(SUS304など)、磁石がつくのはフェライト系(SUS430など)やマルテンサイト系という基本を理解することが重要です。

材料選定や日常のステンレス判定に今回の知識をぜひ役立ててみてください。

ステンレスの種類と磁性の関係を正しく理解することが、用途に合った材料選定と確実な品質管理への鍵となるでしょう。