製品開発、製造、ソフトウェア開発などで使われる「試作」は、英語では主に prototype と表します。
ただし、量産前の製造工程を強調する場合、外観見本を指す場合、概念検証を指す場合では、適切な英語が変わります。
英語の試作表現を正確に使い分けると、海外の取引先や開発チームとの認識違いを防ぎ、仕様確認や納期調整も進めやすくなるでしょう。
試作の英語表記一覧

それではまず試作の英語表記について解説していきます。
最も汎用的な単語は prototype です。
一方で、試作品そのもの、試作する行為、試作段階といった文法上の役割により、表現を整える必要があります。
prototypeの意味と読み方
prototype は名詞で「試作品」「原型」「試作モデル」を意味します。
カタカナでは「プロトタイプ」と読むのが一般的で、発音はプロウタタイプに近い響きです。
工業製品だけでなく、アプリ、Webサイト、家電、医療機器、包装材、サービス設計など、幅広い領域で利用できます。
たとえば、完成品の前に性能や形状を確認するために作ったものは、基本的に prototype と呼べます。
| 英語表記 | 品詞 | 主な意味 | 読み方の目安 |
|---|---|---|---|
| prototype | 名詞 | 試作品、原型 | プロトタイプ |
| prototyping | 名詞 | 試作活動、試作工程 | プロトタイピング |
| prototype model | 名詞句 | 試作モデル | プロトタイプ モデル |
| prototype unit | 名詞句 | 試作機、試作ユニット | プロトタイプ ユニット |
| prototype version | 名詞句 | 試作版、試作品版 | プロトタイプ バージョン |
prototype は数えられる名詞です。
試作品が一つなら a prototype、複数なら prototypes とします。
メールや資料では、the prototype がどの試作品を示すのか、図面番号や版数とともに明記すると親切です。
試作品全般を自然に表すなら prototype が第一候補です。
ただし、量産前の工程を伝えたい場合は trial production、見た目の模型なら mockup などに置き換えるほうが正確でしょう。
試作するの英語表現
prototype は本来名詞ですが、会話や実務では動詞として使われることもあります。
to prototype は「試作する」「試作品を作る」という意味で、特にデザインやソフトウェア開発でよく見かける表現です。
ただし、製造業の正式な文書では develop a prototype や build a prototype のほうが明快な場合もあります。
We will build a prototype before mass production.
私たちは量産前に試作品を製作します。
試作を進めるという意味では conduct prototyping、試作を開始するなら start prototyping と表現できます。
develop a prototype は、単に作るだけでなく、設計や検証を含めて開発する印象を持つ表現です。
形容詞として使う語句
「試作の部品」「試作段階の設計」のように名詞を修飾する場合は、prototype を前に置く方法が便利です。
prototype part は試作部品、prototype design は試作設計、prototype test は試作試験という意味になります。
なお、prototypical は「典型的な」「原型となる」という形容詞であり、試作中という意味では通常使いません。
この違いは、技術翻訳で誤用が起きやすい点です。
prototype parts
試作部品
prototype testing
試作品を用いた試験、または試作試験
試作関連語の言い換え一覧
続いては試作に近い英語表現の使い分けを確認していきます。
日本語では「試作」で済む場面でも、英語では目的や完成度に応じて単語を選ぶことが大切です。
ここでは、実務で迷いやすい関連語をシーン別に整理します。
製造と量産準備に関する表現
| 表現 | 意味 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| prototype | 試作品 | 設計確認、機能検証、初期開発 | 最も幅広く使える表現 |
| trial production | 試験生産、試作生産 | 量産前の生産条件確認 | 工程や生産活動に重点がある |
| pilot production | パイロット生産 | 本格量産直前の小規模生産 | 生産ラインの検証にも使われる |
| pilot run | 試験的な生産運転 | 設備条件、作業手順の確認 | 製品単体より生産実施を表す |
| pre-production sample | 量産前サンプル | 量産移行の承認、顧客確認 | 完成仕様に近い試作品 |
| first article | 初品 | 初回生産品の検査 | 品質保証の文脈で使われやすい |
| engineering sample | 技術評価用試作品 | 設計・性能の評価 | 略して ES と書かれる場合がある |
量産を前提とする工場とのやり取りでは、prototype だけでは試作の段階が伝わらないことがあります。
金型、治具、生産設備、作業標準まで検証する段階なら、pilot production や trial production を選ぶと意図が明確です。
特に pre-production sample は、量産品と同等の材料や工程で製作したサンプルを示す際に役立ちます。
デザインと外観確認に関する表現
| 表現 | 意味 | 主な用途 | 完成度の目安 |
|---|---|---|---|
| mockup | モックアップ、外観模型 | 外装、画面、展示、提案 | 機能しない場合もある |
| scale model | 縮尺模型 | 建築、車両、製品展示 | 寸法比率を重視 |
| concept model | コンセプトモデル | 企画初期、意匠検討 | 概念を見せる段階 |
| design model | デザインモデル | 形状、色、質感の確認 | 見た目を重視 |
| appearance sample | 外観サンプル | 色味、印刷、表面仕上げ | 外観評価が中心 |
| maquette | 立体の原型模型 | 造形、キャラクター、彫刻 | 専門的な表現 |
mockup は、完成品に見えるものの、内部機能までは再現していない試作品を指すことが多い表現です。
アプリやWebサービスでは、画面遷移を確認するクリック可能な画面案も mockup と呼ばれます。
機能検証を主目的とする prototype と、視覚的な確認を主目的とする mockup は区別しておくとよいでしょう。
外観を見せるだけなら mockup、動作や性能を確認するなら prototype が基本です。
一つの試作品が両方の目的を持つ場合は、functional prototype や appearance prototype のように補足します。
企画と技術検証に関する表現
| 表現 | 意味 | 使われる分野 | 試作との違い |
|---|---|---|---|
| proof of concept | 概念実証 | IT、新規事業、研究開発 | 実現可能性を確かめる |
| minimum viable product | 必要最小限の製品 | スタートアップ、アプリ開発 | 顧客提供を前提とする |
| demo | 実演用試作品、デモ | 営業、展示会、社内説明 | 見せる目的が強い |
| test bed | 試験環境、実験基盤 | 通信、機械、ソフトウェア | 製品より検証環境を指す |
| feasibility study | 実現可能性調査 | 事業、設備、研究 | 試作品を伴わないこともある |
proof of concept は一般に PoC と略され、「そのアイデアや技術が実際に成立するか」を確かめる取り組みです。
PoCでは完成度よりも成立性が重視されるため、試作品そのものを意味する prototype とは少し範囲が異なります。
MVP は市場や利用者へ提供できる最小限の製品を指し、社内検証用の試作品とは限りません。
ビジネスメールでの使い方
続いてはビジネスにおける試作表現の使い方を確認していきます。
海外向けメールでは、試作品の目的、数量、評価項目、出荷日、承認の要否を一緒に書くことが重要です。
prototype という単語だけに頼らず、相手に求める行動まで示すと、やり取りが円滑になります。
試作品の作成を伝える例文
We are developing a prototype based on the latest specifications.
私たちは最新仕様に基づいて試作品を開発しています。
developing は継続中の開発を示すため、進捗報告に適しています。
設計変更を反映したことまで伝えるなら based on the revised drawings のように補足できます。
Our team will produce two prototype units for evaluation.
当社チームは評価用として試作機を二台製作します。
unit は機器、装置、電子製品など、個体数を数える際に使いやすい語です。
部品の試作であれば units を parts に置き換えると自然になります。
for evaluation を加えることで、評価目的の試作であることも伝わります。
確認と承認を依頼する例文
Please review the prototype and let us know if any changes are required.
試作品をご確認いただき、変更が必要な場合はお知らせください。
review は内容を確認して評価するニュアンスを持つため、顧客や上司への依頼に使いやすい単語です。
見た目だけを確認してほしい場合は inspect よりも review the appearance のほうが柔らかく伝わるでしょう。
We would appreciate your approval of the pre-production sample by Friday.
金曜日までに量産前サンプルをご承認いただけますと幸いです。
approval は正式な承認を意味します。
量産開始に関わる確認では、pre-production sample と approval を組み合わせると、重要度が伝わりやすくなります。
遅延や修正を伝える例文
The prototype delivery has been delayed due to a component shortage.
部品不足により、試作品の納入が遅れています。
delay は遅延、component shortage は部品不足です。
原因を伝えた後には、改訂後の納期や代替案を添えることが望ましいでしょう。
試作関連のメールでは、対象物だけでなく、目的と期限をセットで示すことが重要です。
prototype for testing、prototype for customer review、prototype delivery date のように目的語句を加えると、誤解を減らせます。
略称とカタカナ表現
続いては略称、短縮形、カタカナ表現について確認していきます。
試作に関する英語には業界ごとの略語がありますが、初めて送る資料では略語の意味を補う配慮が必要です。
略称だけを並べると、部署や取引先によって解釈がずれる可能性があります。
prototypeとprotoの扱い
prototype を短くして proto と書くことがあります。
読み方は「プロト」で、プロダクトデザイン、ゲーム、ソフトウェア、スタートアップなどで比較的よく見られます。
たとえば proto build は試作ビルド、proto review は試作品レビューという意味合いです。
ただし proto は口語的かつ社内用語に近いため、契約書、見積書、正式な顧客向け文書では prototype を使うほうが安全です。
| 表記 | 読み方 | 使いやすい場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| prototype | プロトタイプ | 正式資料、顧客メール、仕様書 | 最も無難な標準表現 |
| proto | プロト | 社内会話、開発チャット | 相手に通じるか確認が必要 |
| PoC | ピーオーシー | 技術実証、新規事業 | 試作品と同義ではない |
| MVP | エムブイピー | 市場検証、プロダクト開発 | 最小機能の提供製品を指す |
| EVT | イーブイティー | ハードウェア開発 | 企業ごとに工程定義が異なる |
| DVT | ディーブイティー | 設計検証 | 詳細は相手の工程表で確認する |
| PVT | ピーブイティー | 量産検証 | 量産直前の評価段階を表す |
EVTとDVTとPVTの意味
ハードウェア開発では、EVT、DVT、PVTという略称が使われることがあります。
EVTは Engineering Validation Test、DVTは Design Validation Test、PVTは Production Validation Test の略です。
一般には、EVTで技術や基本機能を確認し、DVTで設計の妥当性を検証し、PVTで量産条件を確認します。
ただし、各略語の範囲や必要数量は企業によって異なります。
略語を使う場合は、そのプロジェクト内での定義を確認しておくことが大切です。
スラングと避けたい表現
英語圏で試作品を軽く表現する際に、rough prototype や quick prototype と言うことがあります。
rough は粗い、quick は迅速なという意味で、完成度よりスピードを優先した試作であることを示します。
ただし、これらは品質が低いという印象につながる場合もあるため、対外的な説明では使用場面を選びましょう。
また、日本語の「サンプル」をそのまま sample と訳すると、試作品ではなく、単なる見本や抜き取り品の意味に取られることがあります。
機能を持つ試作品なら、sample より prototype を使うほうが意図に合うことが多いでしょう。
業界別の試作表現
続いては業界ごとに適した試作表現を確認していきます。
同じ prototype でも、製造業、IT、建築、研究開発では、相手が想定する完成度や用途が異なることがあります。
業界の慣習を踏まえた補足語を加えることが、実務上のポイントです。
製造業と部品開発の表現
機械、電子機器、自動車、金属加工の分野では、prototype part、trial part、engineering sample などが使われます。
部品単位なら prototype part、組立品なら prototype assembly、試作機なら prototype unit が分かりやすい表現です。
量産条件で作られた初回品を指す場合は first article や first article sample が候補になります。
検査成績書や承認資料に関わる場合は、試作の段階だけでなく、材料、金型、生産ライン、検査条件も明記するとよいでしょう。
ITとソフトウェア開発の表現
IT分野では prototype は、画面や操作感を素早く確認するための簡易版を意味することが多い表現です。
動作しない画面案なら wireframe や mockup、操作できる画面案なら interactive prototype と呼ばれることがあります。
技術的に可能か確かめるための小規模実装は proof of concept、利用者に提供して反応を見る最小版は MVP が適しています。
このため、「試作アプリ」と言いたい場合も、何を検証するのかによって英語を選ぶ必要があります。
画面設計の確認には mockup や interactive prototype、技術成立性の確認には PoC、顧客価値の検証には MVPが適しています。
すべてを prototype と表現しても通じますが、目的を示す語を添えると実務品質が上がります。
建築とデザイン領域の表現
建築、家具、空間デザインでは、scale model、physical model、mockup などが使われます。
縮尺を再現した模型なら scale model、実物大で施工や質感を確認するものなら full-scale mockup が自然です。
展示用やプレゼンテーション用であれば presentation model と表すこともあります。
建築の試作では、完成品の性能だけでなく、施工方法、素材の見え方、耐久性、安全性を検討する場合もあるため、確認対象を説明に加えましょう。
試作英語表現のまとめ
「試作」の英語表記として最も基本となるのは prototype です。
試作品そのものには prototype、試作活動には prototyping、試作する行為には build a prototype や develop a prototype を使うと伝わりやすいでしょう。
量産前の生産確認なら trial production や pilot production、外観確認なら mockup、技術の成立性確認なら PoCが適しています。
また、略称の proto、EVT、DVT、PVTは便利ですが、相手によって意味の受け取り方が異なることがあります。
試作品の目的、完成度、評価内容、量産との関係を添えて説明することが、英語での円滑なビジネスコミュニケーションにつながります。