透磁率の求め方は?計算方法や公式も!(透磁率 求め方:計算式:測定方法:単位など)
透磁率は、磁気回路の設計、コイルのインダクタンス計算、磁性材料の選定などで重要になる物性値です。
公式だけを見ると難しく感じられますが、磁束密度、磁界の強さ、比透磁率の関係を順に押さえれば、目的に合う求め方を選べるようになります。
この記事では、透磁率の基本式、単位、材料別の考え方、実測時の注意点までをわかりやすく整理します。
透磁率の求め方の基本

それではまず透磁率の求め方の基本について解説していきます。
磁束密度と磁界の強さによる計算
透磁率は、磁界の強さに対してどれだけ磁束密度が生じるかを表す値です。
基本となる関係式は、磁束密度を磁界の強さで割る形になります。
透磁率 μ = 磁束密度 B ÷ 磁界の強さ H
記号では μ = B ÷ H と表します。
磁束密度Bの単位はテスラ、磁界の強さHの単位はアンペア毎メートルです。
したがって、透磁率μの単位はヘンリー毎メートルとなります。
真空中での透磁率は一定ですが、鉄やフェライトのような磁性体では材料の性質や磁界の大きさにより大きく変化します。
真空の透磁率と比透磁率の関係
実務や学習では、絶対的な透磁率だけでなく、真空と比較した比透磁率を使う場面が多くあります。
比透磁率は、材料の透磁率を真空の透磁率で割った無次元の値です。
比透磁率 μr = 透磁率 μ ÷ 真空の透磁率 μ0
透磁率 μ = 真空の透磁率 μ0 × 比透磁率 μr
真空の透磁率μ0は、おおよそ1.2566×10のマイナス6乗ヘンリー毎メートルとして扱われます。
比透磁率が1に近い材料は空気や銅のように磁気の影響をほとんど増幅しません。
一方で、比透磁率が大きい材料は磁束を通しやすく、変圧器やインダクタの磁心に利用されます。
計算に必要な値の確認
透磁率を求める前に、手元にある数値がBなのかHなのか、あるいは磁束Φなのかを確認することが大切です。
磁束Φしかない場合は、断面積Aを用いて磁束密度へ換算します。
磁束密度 B = 磁束 Φ ÷ 断面積 A
透磁率 μ = 磁束 Φ ÷ 断面積 A ÷ 磁界の強さ H
断面積は平方メートルでそろえる必要があります。
ミリメートル平方のまま代入すると値が大きくずれるため、単位換算を計算前に済ませることが重要です。
透磁率の基本計算では、BをHで割ります。
ただし磁性材料ではBとHが比例しないことがあるため、求めた値がどの磁界条件での値かも併せて確認しましょう。
透磁率の公式と記号
続いては透磁率の公式と記号を確認していきます。
絶対透磁率の表し方
絶対透磁率は単に透磁率とも呼ばれ、材料が磁束を通す性質そのものを数値で示します。
通常はギリシャ文字のμで表記されます。
式μ=B÷Hは、線形な磁気特性を仮定したときに使いやすい代表式です。
空気、真空、非磁性体に近い材料では、この近似で実用上十分な場合が多いでしょう。
ただし鉄系材料では、磁界を強くするにつれて磁束密度の増え方が変わります。
そのため、カタログに記載された透磁率を一つの固定値として扱わない姿勢が必要です。
比透磁率の読み方
比透磁率μrは、真空に対して何倍の透磁率を持つかを示す比率です。
単位を持たないので、異なる材料の磁気的な傾向を比較しやすい特徴があります。
| 材料の分類 | 比透磁率の傾向 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 真空 | 1 | 比較の基準 |
| 空気 | ほぼ1 | 磁気回路の空隙として扱われる |
| 銅やアルミニウム | ほぼ1 | 一般に非磁性材料として扱う |
| フェライト | 数十から数千程度 | 高周波用磁心で使用される |
| 電磁鋼板 | 条件により大きく変動 | 変圧器やモーターに使用される |
比透磁率が高いほど常に優れた材料とは限りません。
周波数特性、飽和磁束密度、損失、温度特性まで含めて選定する必要があります。
磁化率との違い
透磁率と混同されやすい言葉に磁化率があります。
磁化率は、外部磁界によって材料がどれほど磁化するかを表す値です。
国際単位系では、比透磁率と磁化率の間に一定の関係があります。
一般的な表現では、比透磁率は1に磁化率を加えた値として理解できます。
磁化率が正なら常磁性や強磁性の傾向を示し、負なら反磁性の傾向を示します。
設計計算では、資料に透磁率と磁化率のどちらが記載されているかを確認しましょう。
磁気回路による透磁率計算
続いては磁気回路による透磁率計算を確認していきます。
コイルの巻数と磁界の強さ
コイルに電流を流して測定する場合、磁界の強さHはコイルの巻数、電流、磁路長から求めます。
磁路がほぼ均一であるとみなせる場合、磁界の強さは巻数と電流の積を磁路長で割って計算します。
巻数をN、電流をI、磁路長をlとすると、HはNI÷lで近似できます。
たとえば巻数が多いほど、また電流が大きいほど、磁界は強くなります。
磁路長はコアの平均磁路長を用いるのが一般的です。
外周だけ、あるいは内周だけで計算すると誤差につながるため注意してください。
磁束から求める手順
磁束を測定できる場合は、断面積を経由して磁束密度Bを求めます。
その後、コイル条件から求めたHで割れば、材料の透磁率を算出できます。
| 手順 | 確認する内容 | 計算または測定 |
|---|---|---|
| 一 | 磁路長 | コアの平均的な周長を求める |
| 二 | 磁界の強さ | H=NI÷lで算出する |
| 三 | 断面積 | 磁束が通る有効断面積を求める |
| 四 | 磁束密度 | B=Φ÷Aで算出する |
| 五 | 透磁率 | μ=B÷Hで算出する |
測定された磁束には、漏れ磁束や巻線の位置による影響が含まれることがあります。
精度を重視するなら、試料形状と測定治具を含めて条件をそろえる必要があります。
磁気抵抗から考える方法
磁気回路では、電気回路の抵抗に似た考え方として磁気抵抗を用います。
磁気抵抗は、磁路長が長いほど大きく、断面積と透磁率が大きいほど小さくなります。
磁気抵抗をRmとすると、概念的には磁路長を透磁率と断面積の積で割る形です。
この考え方は、ギャップを持つコアや複数材料から成る磁気回路の検討で役立ちます。
空気のギャップは磁気抵抗を大きくしやすい部分です。
コアの透磁率が非常に高くても、わずかな空隙がインダクタンスや必要な励磁電流を左右することがあります。
コイルを使う測定では、磁界の強さHを正しく求めることが第一歩です。
巻数、電流、平均磁路長の単位をそろえ、磁束密度Bとの対応を確認してください。
透磁率の単位と換算
続いては透磁率の単位と換算を確認していきます。
国際単位系での単位
透磁率の国際単位系における単位は、ヘンリー毎メートルです。
記号ではH毎mと書かれます。
式μ=B÷Hから考えると、テスラをアンペア毎メートルで割った結果がヘンリー毎メートルになります。
資料によってはテスラメートル毎アンペアの形で示される場合もあります。
いずれも同じ次元を表すため、単位表記の見た目だけで別の値と判断しないことが大切です。
センチメートル系資料の扱い
古い資料や海外資料には、国際単位系とは異なる単位系の記載が残っていることがあります。
この場合、透磁率、磁界、磁束密度の定義そのものが国際単位系と異なる可能性があります。
数値だけを単純に移し替えると、係数の違いを見落とすおそれがあります。
特にガウス、エルステッド、マクスウェルなどが出てくる資料では、使用している単位系を最初に確かめましょう。
設計書や報告書に転記する際は、国際単位系へ統一し、換算根拠も残しておくと安全です。
指数表記と面積換算
透磁率の計算では、10のマイナス6乗のような指数表記が頻繁に登場します。
さらに断面積の換算では、長さの換算倍率を二乗する必要があります。
| 元の単位 | 国際単位系への換算 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一ミリメートル | 0.001メートル | 長さの換算 |
| 一平方ミリメートル | 0.000001平方メートル | 倍率は二乗になる |
| 一センチメートル | 0.01メートル | 磁路長でよく使用される |
| 一平方センチメートル | 0.0001平方メートル | 断面積でよく使用される |
断面積の換算ミスは、透磁率を一万倍や十分の一万にしてしまう原因になります。
長さと面積の換算を分けて確認する習慣が、計算の信頼性を高めます。
透磁率の測定方法
続いては透磁率の測定方法を確認していきます。
環状試料による測定
透磁率を実測する方法として、環状の試料に励磁巻線と検出巻線を巻く方法があります。
環状試料は磁路が閉じているため、端部からの漏れ磁束の影響を抑えやすい形状です。
励磁電流と巻数からHを求め、検出巻線に生じる電圧や磁束からBを求めます。
得られたBとHの組み合わせを用いて、各点での透磁率を計算します。
この方法では、初透磁率、最大透磁率、特定磁界での透磁率など、目的に応じた値を区別して評価できます。
BとHの曲線による評価
強磁性材料では、BとHの関係は直線にならないことが一般的です。
磁界を増減させると、履歴を持つ曲線であるヒステリシスループが現れます。
このとき、ある点でのBをHで割った値は見かけの透磁率として扱われます。
一方で、曲線の傾きから求める値は微分透磁率と呼ばれます。
どちらの透磁率を求めているかで数値が変わるため、測定報告では定義を明記する必要があります。
磁気飽和に近い領域では、Hを増やしてもBが増えにくくなり、透磁率の挙動も変化します。
周波数と温度の影響
交流磁界で使用する材料では、周波数によって有効な透磁率が変化することがあります。
高周波では渦電流損失や磁壁の応答が影響し、直流付近の測定値をそのまま使えない場合があります。
フェライトやアモルファス材料などは、用途に応じて周波数特性が公表されています。
温度も見逃せない条件です。
温度の変化により透磁率が変わる材料では、常温測定だけで製品の実使用状態を判断できないことがあります。
測定時には温度、周波数、励磁電流、バイアス磁界を記録しておくと、後から結果を比較しやすくなります。
測定値としての透磁率には、試料形状、周波数、温度、磁界の大きさが関わります。
材料表の数値と自分の測定値を比較するときは、同じ条件かどうかを必ず確かめましょう。
透磁率計算の注意点
続いては透磁率計算の注意点を確認していきます。
非線形性と磁気飽和
鉄、ニッケル、コバルトを含む磁性材料では、透磁率が一定とは限りません。
低い磁界では大きな透磁率を示しても、磁気飽和に近づくにつれて小さく見えることがあります。
カタログに初透磁率と最大透磁率が併記されているのは、この非線形性があるためです。
設計に使う値は、材料が実際に動作する磁界の範囲で選ぶ必要があります。
最大値だけを採用すると、実機で期待したインダクタンスを得られない場合があります。
空隙と漏れ磁束の影響
磁気回路に空隙があると、空隙部分の透磁率が低いため、全体の磁気抵抗が大きくなります。
これは意図的にインダクタの特性を安定させる場合にも利用されます。
一方で、空隙の周囲では磁束が広がるフリンジングが起こり、有効断面積が単純計算と異なることがあります。
コアの接合面にわずかなすき間があるだけでも、測定結果やインダクタンスに影響するでしょう。
治具への固定状態、表面の汚れ、組み立て時の圧力まで管理することが望まれます。
実効透磁率の考え方
コア単体の材料透磁率と、ギャップを含む部品全体の実効透磁率は区別する必要があります。
実効透磁率は、コア形状や空隙を含めた磁気回路全体としての見かけの値です。
インダクタやトランスの設計では、材料固有の比透磁率よりも実効透磁率の方が直接役立つことがあります。
巻線数とインダクタンスから逆算する方法も、実効的な特性を把握するために有効です。
ただし巻線の分布、漏れインダクタンス、測定周波数の影響を受けるため、条件を記録して比較してください。
透磁率の求め方のまとめ
透磁率は、磁束密度Bを磁界の強さHで割ることで基本的に求められます。
材料の比較では比透磁率を使い、透磁率μ=真空の透磁率μ0×比透磁率μrの関係を利用します。
コイルを用いる場合は、巻数、電流、磁路長からHを求め、磁束と断面積からBを計算する流れが基本です。
透磁率の単位はヘンリー毎メートルであり、断面積の単位換算は特に慎重に行いましょう。
また、強磁性材料の透磁率は磁界、周波数、温度、空隙の有無によって変わります。
公式へ数値を代入するだけで終わらせず、どの条件で得られた値なのかまで確認することが、正確な計算と測定につながります。