日本語の文章を縦書きで書くとき、括弧の使い方に迷ったことはないでしょうか。
横書きに慣れていると、縦書きでの括弧の向きや種類をどう使い分ければよいのか、なかなかとっさに判断できないものです。
縦書きの日本語文書では、括弧の向き・種類・配置方法にいくつかの独自のルールがあります。
原稿用紙への記入や縦組みの出版物・公文書など、縦書きが求められる場面は今でも多く存在します。
本記事では、括弧の縦書きでの使い方を中心に、表記方法とルール・日本語文書における慣習・原稿用紙での書き方・縦組みでの文字の向きと配置方法まで、わかりやすく丁寧に解説していきます。
縦書きの文書を作成する機会がある方はもちろん、日本語表記のルールに興味がある方にもお役立ていただける内容です。
括弧の縦書きでの使い方とは?縦組みに対応した向きと種類の選択が基本
それではまず、括弧の縦書きでの使い方の基本から解説していきます。
縦書きの日本語文書では、横書きと同じ括弧記号を使いますが、組版ソフトや印刷においては括弧の向きが縦組みに合わせて自動的に回転・調整されます。
手書きの場合は、括弧の形そのものを縦向きに書き直す必要があります。
縦書きで使われる括弧の種類は横書きとほぼ同じですが、向きと配置が異なるため、見た目の印象が変わります。
代表的な括弧として、丸括弧(( ))・鍵括弧(「 」)・二重鍵括弧(『 』)・亀甲括弧(〔 〕)・隅付き括弧(【 】)などがあります。
これらはそれぞれ用途が異なり、縦書きでの使い方にも慣習的なルールが存在します。
縦書きにおける括弧の向きと回転
縦書き(縦組み)では、括弧記号は縦方向に開くよう配置されます。
丸括弧「( )」は、横書きでは左右に開いていますが、縦書きでは上下に開くように向きが変わります。
組版ソフト(InDesignやWord等)では、縦書き設定にすると括弧類が自動的に縦向きに回転処理されますが、手書きや一部のソフトでは手動で対応が必要です。
鍵括弧「「 」」は縦書きに最も適した括弧のひとつで、縦組みの日本語文書では横書きと同じ向きのまま使用できます。
鍵括弧は日本語の縦書き文化に根ざした記号であり、会話文・引用・強調に幅広く使われています。
鍵括弧と二重鍵括弧の縦書きでの使い方
縦書きの日本語文書で最もよく使われるのが鍵括弧(「 」)と二重鍵括弧(『 』)です。
鍵括弧は会話文・引用・特定の語句の強調に使います。
二重鍵括弧は書籍名・作品名・鍵括弧の中にさらに括弧が必要なとき(括弧の入れ子)に使います。
縦書きでの鍵括弧の使い方例
会話文:彼は「今日は晴れている」と言った。
作品名:『坊っちゃん』は夏目漱石の代表作である。
入れ子:彼は「『坊っちゃん』を読んだ」と話した。
鍵括弧の中で書名等を示す場合は二重鍵括弧を使います。
原稿用紙での括弧の書き方ルール
原稿用紙(縦書き)での括弧の書き方には、学校教育でも教えられる明確なルールがあります。
括弧の開き(「)は前の文字と同じマス、または行頭に来ることができます。
括弧の閉じ(」)は句点(。)と同じマスに収めてよいとされています。
会話文の「」の開きは行の最初のマスに来てもよく、一般に段落の最初に「で始まる会話文は、行の一番上のマスから書き始めます。
また、括弧(「」)の中の文末には、句点(。)を付けないことが多い慣習があります。
これは特に会話文の鍵括弧内での取り扱いであり、文章の種類や出版社・メディアによって異なる場合もあります。
縦書きで使う括弧の種類と用途について確認していきます
続いては、縦書きで使われる括弧の種類と用途について確認していきます。
括弧にはさまざまな種類があり、それぞれの用途を正しく把握することで文書の読みやすさと正確さが向上します。
丸括弧(( ))の縦書きでの使い方
丸括弧は縦書きでも横書きと同様に、補足説明・注記・言い換えなどに使われます。
組版上は縦書きモードで自動的に縦向きになりますが、手書きの場合は括弧の開き方向を縦に合わせて書きます。
縦書きの丸括弧は、本文テキストの流れを止めずに補足情報を挿入するために非常に効果的な記号です。
学術論文・法律文書・説明文など、補注が多い文書で特によく使われます。
ただし、縦書きの美しさを重視する出版物では、丸括弧の使用を避け、ダッシュや脚注に置き換えることもあります。
隅付き括弧・亀甲括弧の用途
隅付き括弧(【 】)は縦書きでも見出し・項目名・重要語句の強調などに使われます。
新聞・雑誌・WEBコンテンツの見出しなどでよく見かけます。
亀甲括弧(〔 〕)は引用元の追記・補足・訂正箇所の明示など、主に学術・編集上の用途で使われます。
亀甲括弧は原文に手を加えた部分や編者の注記を示すために使われることが多く、学術的な文書では重要な表記記号です。
括弧の入れ子(ネスト)のルール
括弧の中にさらに括弧を入れる「入れ子(ネスト)」の場合には、括弧の種類を変えることが推奨されます。
| 外側の括弧 | 内側の括弧 | 用途例 |
|---|---|---|
| 鍵括弧「 」 | 二重鍵括弧『 』 | 会話文中の書名・作品名 |
| 丸括弧( ) | 角括弧〔 〕 | 補足説明中のさらなる注記 |
| 二重鍵括弧『 』 | 鍵括弧「 」 | 書名内の会話文・強調語 |
同じ種類の括弧を入れ子にすることは原則として避け、読者が括弧の対応関係を見失わないよう配慮することが大切です。
縦書き文書での括弧の配置と組版ルールを確認していきます
続いては、縦書き文書での括弧の配置と組版上のルールについて確認していきます。
組版・タイポグラフィの観点から括弧の配置を正しく扱うことで、読みやすく美しい縦書き文書が作成できます。
禁則処理と括弧の行頭・行末配置
縦書き文書での括弧には「禁則処理」というルールが適用されます。
禁則処理とは、文字の組み方において特定の文字が行頭・行末に来てはいけないというルールです。
括弧の閉じ(」)は行頭禁則文字であり、行の一番上(縦書きの場合)に来てはいけません。
括弧の開き(「)は行末禁則文字であり、行の一番下に単独で来てはいけません。
これらの禁則処理はワードプロセッサーや組版ソフトが自動的に行うことが多いですが、手書きや簡易なテキスト編集では自分で意識する必要があります。
括弧と句読点の配置の関係
縦書き文書では、括弧と句読点の配置関係にも注意が必要です。
文末が括弧で終わる場合、句点(。)の位置は括弧の外に置くか内に置くかがケースによって異なります。
一般的なルールとして、括弧内の文章が独立した文である場合は括弧の内側に句点を置き、括弧が文の一部として機能している場合は括弧の外側に句点を置きます。
縦書きでの括弧と句点の配置ルール
・括弧が文の一部(補足説明)の場合:〜に参加した(全員で10名)。→句点は括弧の外
・括弧が独立した文を含む場合:(詳細は第3章を参照。)→句点は括弧の内側
このルールは出版社・媒体によって異なることがあるため、スタイルガイドに従うことが重要です。
縦中横(たてなかよこ)と括弧
縦書きの文章中に算用数字・アルファベット・欧文が含まれる場合、「縦中横(たてなかよこ)」という処理が行われることがあります。
縦中横とは、縦書きの行の中で一部の文字を横組みにして配置する組版技術です。
「令和5年」のような年号表記や「3つ」のような短い数字表記では縦中横を使うことが多く、これに括弧が組み合わさる場合は括弧の向きと縦中横の整合性に注意が必要です。
組版ソフトでは縦中横の範囲を指定することで自動的に処理されますが、手書きではこの技術を意識的に使いこなす必要があります。
WEBや電子文書での縦書き括弧の扱いを確認していきます
続いては、WEBや電子文書での縦書き括弧の扱いについて確認していきます。
デジタル環境における縦書きの実装は、従来の紙媒体とは異なる考慮事項があります。
CSSでの縦書き実装と括弧
WEBページでの縦書きはCSS(スタイルシート)の writing-mode プロパティを使って実現できます。
writing-mode: vertical-rl または writing-mode: vertical-lr を指定することで縦書きテキストを表示できます。
CSSの縦書きモードでは、括弧記号はUnicodeの縦書き用文字またはブラウザの自動回転処理によって縦向きに表示されます。
ただし、ブラウザの種類やバージョンによって括弧の自動回転の対応状況が異なるため、意図した通りに表示されているか確認が必要です。
特に全角丸括弧は縦書きモードで自動回転されることが多いですが、一部の環境では横向きのまま表示される場合もあります。
電子書籍(EPUB)での縦書き括弧
電子書籍フォーマットであるEPUBでは、縦書きの日本語コンテンツが広くサポートされています。
EPUBの縦書きコンテンツでは、JIS X 4051(日本語文書の組版方法)の規定に準拠した括弧の処理が推奨されています。
電子書籍リーダー(Kindle・楽天Koboなど)は多くの場合、縦書きモードでの括弧の正しい表示に対応しています。
電子書籍制作では、縦書き括弧の正確な表示を確認するために複数のデバイス・リーダーでの表示テストが不可欠です。
Wordでの縦書き文書と括弧の設定
Microsoft Wordで縦書き文書を作成する場合、テキストボックスや段落の文字の方向を「縦書き」に設定することで縦組みが実現できます。
Wordの縦書きモードでは、全角括弧(「」『』()など)は自動的に縦向きに処理されます。
一方、半角括弧や半角英数字は縦書きでそのまま表示されると横向きになるため、全角文字を使用するか縦中横の設定を行うことが必要です。
Wordの「縦中横」機能を使うことで、縦書きの中の数字や英字を適切に処理することができます。
まとめ
本記事では、括弧の縦書きでの使い方について、表記方法とルール・日本語文書の慣習・原稿用紙での書き方・縦組みでの配置・WEBや電子文書での対応まで幅広く解説してきました。
縦書きでは鍵括弧・二重鍵括弧が最も頻繁に使われ、丸括弧・亀甲括弧・隅付き括弧もそれぞれの用途に応じて活用されます。
禁則処理として括弧の閉じは行頭禁則、括弧の開きは行末禁則というルールが適用されます。
原稿用紙では会話文の鍵括弧の開きは行頭から始め、括弧内の文末に句点を付けない慣習があります。
デジタル環境では、CSSのwriting-modeやWordの縦書き設定、電子書籍のEPUB規格に対応した括弧処理が必要です。
縦書きの括弧の使い方を正しく理解することは、美しく読みやすい日本語縦書き文書を作るための基礎となります。