日本語の「要求」は、英語では一語に決められる表現ではありません。
相手に強く求めるのか、契約上の条件を伝えるのか、必要な仕様を説明するのかによって、選ぶべき単語が変わります。
とくにビジネス英語では、場面に合わない語を選ぶと高圧的に聞こえたり、反対に要望の重要性が伝わりにくくなったりするため注意が必要です。
この記事では、要求を表す英語のスペル、カタカナでの読み方、品詞ごとの使い分け、メールや会議で役立つ例文を分かりやすく紹介します。
demand、request、requirement、requireは似て見えても役割が異なる語ですので、基本から順番に確認していきましょう。
「要求」の英語表記一覧と場面別の使い分け

それではまず「要求」の英語表記一覧と場面別の使い分けについて解説していきます。
最初に結論を述べると、強い要求にはdemand、丁寧な依頼や要望にはrequest、必要条件にはrequirement、動詞で求める場合にはrequireを使うのが基本です。
ただし、実際には相手との関係、契約の有無、業務上の緊急度まで考えて選ぶ必要があります。
基本語の品詞とカタカナ読み
要求に関係する代表的な英単語を、品詞ごとに整理します。
英語では名詞と動詞を混同しやすいため、スペルだけでなく文中での働きも一緒に覚えると実用的でしょう。
| 英語表記 | カタカナ読み | 主な品詞 | 日本語に近い意味 | 強さ |
|---|---|---|---|---|
| demand | ディマンド | 名詞、動詞 | 強い要求、要求する | 強い |
| request | リクエスト | 名詞、動詞 | 依頼、要望、依頼する | 丁寧 |
| requirement | リクワイアメント | 名詞 | 必要条件、要件、要求事項 | 中程度 |
| require | リクワイア | 動詞 | 必要とする、要求する | 客観的 |
| need | ニード | 名詞、動詞 | 必要、必要とする | やわらかい |
| ask | アスク | 動詞 | 頼む、求める | 日常的 |
| expectation | エクスペクテーション | 名詞 | 期待される水準 | 中程度 |
| specification | スペシフィケーション | 名詞 | 仕様、詳細な要求条件 | 技術的 |
demandは名詞でも動詞でも使える点が特徴です。
一方でrequirementは名詞専用であり、動詞として使うことはできません。
相手に何かをしてほしいと伝えるならrequest、満たすべき条件を示すならrequirementという切り分けが、最も失敗しにくい考え方です。
ビジネス場面ごとの言い換え一覧
ビジネスでは、日本語の「要求」をそのままdemandに置き換えないことが大切です。
顧客対応、社内連絡、契約交渉、システム開発では、適した言葉がそれぞれ異なります。
| 場面 | おすすめの表現 | 自然な日本語の意味 | 使う際のポイント |
|---|---|---|---|
| 顧客からの依頼 | customer request | 顧客からの要望 | 中立的で幅広く使えます |
| 顧客の強い主張 | customer demand | 顧客からの強い要求 | 負担や強さを含ませられます |
| 案件の必要条件 | project requirements | プロジェクト要件 | 開発や企画で頻出します |
| 契約上の必要事項 | contractual requirements | 契約上の要求事項 | 客観的な条件として伝えられます |
| 社内へのお願い | request assistance | 支援を依頼する | 命令調を避けたいときに便利です |
| 法令による義務 | be required to | することが求められる | 規則や義務の説明に向きます |
| 採用条件 | job requirements | 募集要件 | 求人情報で定番の表現です |
| 技術上の仕様 | technical specifications | 技術仕様 | 数値や機能を明確に示します |
| 利用者の望み | user needs | ユーザーのニーズ | 調査や企画の文脈に合います |
| 期待水準 | client expectations | 顧客の期待 | 明文化されていない要望にも使えます |
たとえば、顧客が追加機能を希望している段階ならcustomer requestが自然です。
契約条件を超える対応を強く迫っている場合にはcustomer demandと表せます。
要求の内容そのものよりも、話し手がどの程度の圧力や義務を感じているかが語の選択に表れます。
日常会話と硬い表現の一覧
日常会話では、demandよりもaskやwantを使うほうが自然に聞こえる場合があります。
反対に、公式文書や規程ではrequirement、require、mandatoryなどの語がよく使われます。
| 表現 | 使われやすい場面 | 印象 | 短い例 |
|---|---|---|---|
| ask for | 日常会話、社内の軽い依頼 | やわらかい | ask for help |
| want | 希望を伝える場面 | 直接的だが日常的 | want a refund |
| request | メール、受付、顧客対応 | 丁寧で標準的 | request a meeting |
| demand | 抗議、交渉、強い主張 | 強硬 | demand payment |
| require | 規則、業務、制度 | 客観的 | require approval |
| insist on | 譲らずに主張する場面 | 強い意志 | insist on changes |
| mandatory | 規程、案内、研修 | 必須 | mandatory training |
| must | 命令、注意事項 | 非常に強い | must comply |
スラングとして「要求」を表す特別な略称は、ビジネスで安全に使えるものがほとんどありません。
口語でdemandを略して使う習慣も一般的ではないため、無理に短縮せず正しい単語を選ぶのが安心です。
demandの意味と強い要求の伝え方
続いてはdemandの意味と強い要求の伝え方を確認していきます。
demandは「要求」「要求する」を意味し、相手に応じるべきだという強い姿勢を含む単語です。
顧客からの苦情、労働条件の交渉、支払いの督促、社会的な要求などで使われます。
名詞demandのスペルと複数形
名詞のdemandは、可算名詞としても不可算名詞としても用いられます。
個別の要求を数えるときはa demandやdemands、需要という意味では不可算名詞のdemandになる点が重要です。
We received several demands from the client.
私たちは顧客から複数の強い要求を受けました。
この文のdemandsは「いくつかの要求」という数えられる意味です。
一方でThere is high demand for this productは、この製品への需要が高いという意味になり、要求とは少し異なるビジネス用語になります。
demandには要求だけでなく需要という重要な意味があるため、前後の文脈を必ず確認しましょう。
動詞demandの使い方
動詞demandは、demand somethingやdemand thatの形で使えます。
相手を主語にして要求行為を述べるため、メールで自分の希望を伝える際には強すぎることがあります。
The customer demanded an immediate response.
その顧客は直ちに回答するよう強く要求しました。
They demanded that the issue be resolved quickly.
彼らはその問題を速やかに解決するよう要求しました。
demand thatの後では、be resolvedのような原形を使う表現が見られます。
文法上は仮定法現在と呼ばれますが、まずは「demand thatの後には動詞の原形が来やすい」と覚えると十分です。
demandを避けたほうがよい場面
取引先に初めて連絡するメールでI demand an answerと書くと、命令や威圧のように受け取られるおそれがあります。
急ぎの返答が必要でも、Could you please respond by FridayやWe would appreciate your prompt responseのように伝えるほうが協調的です。
demandは相手の不当な行為を批判する文脈や、権利として強く求める文脈には適しています。
しかし通常の依頼では、requestやwould likeを優先すると関係を損ねにくいでしょう。
社内の状況説明では、The team is facing increasing demandsでも自然です。
この場合は「チームに対する要求が増している」という中立的な説明になり、相手を直接攻撃する印象はありません。
requestの意味と丁寧な依頼表現
続いてはrequestの意味と丁寧な依頼表現を確認していきます。
requestは名詞で「依頼、要望」、動詞で「依頼する」を表す標準的な単語です。
ビジネスメール、問い合わせ窓口、会議の日程調整など、幅広い場面で使えます。
名詞requestの自然な組み合わせ
名詞のrequestは、a request for informationのようにforと組み合わせる形がよく使われます。
information requestsは情報提供の依頼、change requestは変更依頼、service requestはサービス依頼を指します。
| 英語表現 | 意味 | 主な使用場面 |
|---|---|---|
| request for information | 情報提供の依頼 | 問い合わせ、営業 |
| request for quotation | 見積依頼 | 購買、調達 |
| change request | 変更要求、変更依頼 | 開発、制作 |
| special request | 特別な要望 | 接客、旅行 |
| formal request | 正式な申請、正式な依頼 | 手続き、文書 |
| customer request | 顧客要望 | 顧客対応 |
| feature request | 機能要望 | ソフトウェア開発 |
change requestは直訳すると変更要求ですが、実務では角の立たない変更依頼として使われることが多い表現です。
日本語訳だけで強さを判断せず、英語圏での一般的な使用感も意識するとよいでしょう。
動詞requestのメール例文
動詞requestはrequest informationやrequest approvalのように目的語を後ろに置きます。
askよりもフォーマルで、demandよりも穏やかな位置づけです。
We would like to request your approval for the proposal.
この提案について、ご承認をお願いしたく存じます。
We would like toを前に置くことで、より丁寧な文になります。
Could we request an extension of the deadlineも、期限延長をお願いしたいときに使える表現です。
依頼文では、理由や希望期限を続けて示すと、相手が判断しやすくなります。
requestの後に依頼内容だけを置かず、背景と対応期限も添えることが、実務のメールでは大切です。
requestとaskの違い
askは日常的で親しみやすい動詞です。
一方のrequestは、記録に残る連絡や正式な依頼に向いています。
たとえば同僚に口頭で助けを求めるならCan I ask you a favorが自然です。
顧客向けフォームで資料を求めるならRequest a brochureのほうが整った印象になります。
親しい相手への会話ではask、社外向けの案内や業務上の申請ではrequestが目安です。
迷った場合は、相手との距離よりも文書の正式さを基準にすると選びやすくなります。
requirementとrequireによる必要条件の表現
続いてはrequirementとrequireによる必要条件の表現を確認していきます。
requirementは「必要条件、要件、要求事項」という名詞で、個人の感情的な要求ではなく、満たすべき客観的な条件を示します。
requireは「必要とする、要求する」という動詞で、規則や業務の条件を説明するときに便利です。
requirementのスペルと複数形
requirementのつづりはr e q u i r e m e n tです。
発音はリクワイアメントに近く、会話ではrequirementsと複数形で使われる場面が多くあります。
たとえばsystem requirementsはシステム要件、entry requirementsは応募条件、legal requirementsは法的要件です。
| 表現 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| business requirements | 業務要件 | 業務上必要な機能や手順 |
| system requirements | システム要件 | 動作環境、性能、連携条件 |
| functional requirements | 機能要件 | できなければならない機能 |
| security requirements | セキュリティ要件 | 認証、権限、保護措置 |
| quality requirements | 品質要件 | 精度、耐久性、検査基準 |
| legal requirements | 法的要件 | 法律や規則による条件 |
| minimum requirements | 最低要件 | 少なくとも必要な水準 |
要件定義の資料ではrequirements documentやrequirements listという表現も使われます。
requirementsは開発、採用、契約、品質管理で共通して使える重要語です。
requireを使う文型
requireはrequire somethingとrequire someone to do somethingの形で使えます。
人に何かをさせる必要があることを示す場合には、to不定詞を続ける形が基本です。
This position requires strong communication skills.
この職種には高いコミュニケーション能力が必要です。
All visitors are required to wear an ID badge.
すべての来訪者は身分証を着用することが求められます。
are required toは受動態の形で、「規則によりする必要がある」という意味になります。
mustよりも制度的で客観的に聞こえるため、案内文や規程に適しています。
形容詞requiredとmandatoryの違い
requiredは「求められる、必須の」という形容詞的な使い方ができます。
mandatoryも「義務的な、必須の」を意味しますが、より強く、例外を認めない印象を持つ語です。
Required documentsは提出が必要な書類、mandatory trainingは受講が義務の研修という違いがあります。
求人票ではrequired skillsとpreferred skillsを並べることがよくあります。
前者は必須スキル、後者はあれば望ましいスキルを意味します。
requiredとpreferredを区別して書くと、採用条件や募集要項の誤解を減らせます。
ビジネスメールと会議で使う例文
続いてはビジネスメールと会議で使う例文を確認していきます。
英単語を知っていても、文全体の組み立て方が不自然では意味が伝わりません。
ここでは、依頼、要件確認、強い要求への対応という実務で多い場面に分けて見ていきます。
依頼を丁寧に伝える例文
相手に資料、確認、承認などをお願いする場合は、requestを使った柔らかい書き方が役立ちます。
We would like to request additional information about the service.
そのサービスについて追加情報をご提供いただきたく存じます。
Could you please review the attached document by Wednesday?
添付資料を水曜日までにご確認いただけますでしょうか。
Could you pleaseはrequestを使わなくても丁寧な依頼を作れる便利な表現です。
依頼の対象が明確な場合は、相手に負担をかけない短い文のほうが読みやすくなります。
メールの件名にもRequest for ApprovalやRequest for Informationを使うと、用件が一目で伝わります。
要件を確認する例文
プロジェクト開始前には、requirementsを複数形で用いて条件を確認する場面がよくあります。
Please let us know your requirements for the new website.
新しいウェブサイトに関するご要件をお知らせください。
We need to clarify the technical requirements before development begins.
開発を始める前に、技術要件を明確にする必要があります。
requirementsの前にtechnical、business、securityなどを付ければ、話題を具体化できます。
会議ではWhat are the key requirements for this projectと尋ねることで、重要な条件を自然に引き出せるでしょう。
強い要望に対応する例文
顧客の要求が厳しい場合でも、相手を批判する言葉だけで表現するのは避けたいところです。
The client has raised several concerns and requestsとすれば、懸念と要望を中立的に報告できます。
一方で、契約範囲を超える強い要求を社内で共有するならThe client is demanding changes outside the agreed scopeのようにdemandingを使えます。
顧客本人に送るメールではdemandを直接使わず、We understand your requestやWe will review the requested changesと表すのが無難です。
社内報告では、要望の内容と要求の強さを分けて記録すると、対応判断がしやすくなります。
要求を表す英語表現の注意点と関連語
続いては要求を表す英語表現の注意点と関連語を確認していきます。
「要求」は文脈によって依頼、条件、需要、義務、期待などに広がります。
訳語を一つに固定しないことが、自然で誤解の少ない英語につながります。
needとwantの使い分け
needは必要性を示し、wantは希望を示す語です。
We need your feedbackは意見が必要だという業務上の必要性を伝え、We want your feedbackは意見を聞きたいという希望を表します。
どちらもdemandほど強くありませんが、needは状況によっては切迫感を含むことがあります。
顧客の行動を分析する文脈ではcustomer needsがよく使われます。
これは顧客要求というより、顧客が本当に必要としていることを指す言葉です。
表面的なrequestと、背景にあるneedを分けて考えると、提案の質を高めやすくなります。
expectationとspecificationの使い分け
expectationは期待、specificationは仕様を意味します。
期待は必ずしも契約上の義務ではありませんが、仕様は数値や機能として具体的に定められることが多いでしょう。
| 語 | 中心となる意味 | 明確さ | 活用場面 |
|---|---|---|---|
| request | 相手への依頼 | 中程度 | メール、窓口、接客 |
| requirement | 満たすべき条件 | 高い | 企画、開発、採用 |
| expectation | 期待する水準 | やや曖昧 | 顧客満足、評価 |
| specification | 詳細な技術仕様 | 非常に高い | 設計、製造、開発 |
| need | 本質的な必要性 | 状況による | 調査、提案、企画 |
クライアントの期待を確認するならmanage expectations、技術条件を確認するならconfirm the specificationsが自然です。
これらをすべてrequirementsと呼ぶと、必要な細かさが伝わらない場合があります。
略称と口語表現の扱い
requirementsを正式に略す共通の短縮形は、一般的なビジネス英語にはありません。
開発チーム内でreqsと書くことはありますが、これは口語的または社内向けの省略です。
社外メール、契約書、提案書ではrequirementsと完全に書くほうが安全でしょう。
requestをreqと略す例も見かけますが、相手によって意味を取り違える可能性があります。
略称はチーム内で意味が共有されている場合だけに留め、正式文書では省略しないのが基本です。
また、demandを軽い意味の「リクエスト」として使うのも避けましょう。
強さを抑えたいときはrequest、would like、could youを選ぶほうが確実です。
「要求」の英語表記のまとめ
ここまで「要求」を表す英語表現についてまとめます。
demandは強い要求、requestは丁寧な依頼、requirementは満たすべき要件、requireは必要とすることを表す動詞です。
顧客とのやり取りではrequestを基本にし、規則や条件の説明ではrequirementやrequireを使うと自然にまとまります。
demandは誤りではありませんが、強い圧力や対立を含みやすいため、使う場面を選ぶ必要があります。
誰が、誰に、どの程度の強さで、何を求めているのかを整理すれば、適切な英語表記を選びやすくなるでしょう。
メールでは依頼内容に加えて背景や期限を添え、正式な文書では略称を避けることも大切です。
まずはrequest、requirement、require、demandの四つを区別し、実際の文章で少しずつ使い分けてみてください。