「覚書」は日本のビジネスや契約実務で頻繁に使われる言葉ですが、英語では文書の目的や法的な位置付けによって表記が変わります。
単純にメモを指す場合と、取引先との合意内容を示す場合では、選ぶべき英単語が大きく異なる点に注意が必要です。
英語の覚書として広く使われるのは memorandum ですが、契約前の合意文書なら Memorandum of Understanding、社内向けの通知なら memo など、場面に応じた使い分けが欠かせません。
この記事では、覚書の英語表記、カタカナでの読み方、例文、ビジネスメールでの使い方、近い表現との違いを分かりやすく整理します。
覚書の英語表記と基本的な使い分け

それではまず覚書の英語表記と基本的な使い分けについて解説していきます。
memorandum の意味とカタカナでの読み方
覚書の基本的な英語表記は memorandum です。
カタカナでは、一般にメモランダムまたはメモランダムと読みます。
英語の発音に近づけるなら、メマランダムのように聞こえることもありますが、日本のビジネス文書ではメモランダムという表記が定着しています。
memorandum は名詞であり、忘れないように記録した事項、伝達事項、備忘録、覚書などを意味する単語です。
社内連絡の短い文書から、取引条件を整理した正式な書面まで、比較的広い範囲で使われます。
ただし、日本語の「覚書」が持つ契約書に近い印象をそのまま memorandum に重ねると、相手に意図が十分伝わらない場合もあります。
文書の当事者、合意内容、拘束力の有無を明確にしたいときは、後述する Memorandum of Understanding などの正式名称を用いるとよいでしょう。
memorandum は幅広い意味を持つ名詞です。
契約に関する覚書なのか、社内向けの伝達文書なのかを本文や題名で補うことが、誤解を避けるポイントです。
memo と memorandum の関係
memo は memorandum を短くした表現です。
memo は日常的で簡潔なメモや社内連絡を指すことが多く、会話やメールでも自然に使えます。
たとえば、会議の要点を書いたメモ、上司への伝言、プロジェクトの検討事項などには memo が適しています。
一方で、取引先と取り交わす覚書の表題を単に Memo とすると、非公式な備忘記録のように受け取られる可能性があります。
文書としての重みを出したい場合には Memorandum、法的な合意の性格を示したい場合には Memorandum of Understanding を選ぶのが無難です。
| 表記 | 主な意味 | 適した場面 | 読み方の目安 |
|---|---|---|---|
| memorandum | 覚書、通知書、備忘録 | 正式な文書、社内外への記録 | メモランダム |
| memo | メモ、簡易連絡 | 社内連絡、個人的な記録 | メモ |
| Memorandum of Understanding | 了解覚書、基本合意書 | 企業間の協業、交渉段階の合意 | メモランダム オブ アンダースタンディング |
| Memorandum of Agreement | 合意覚書 | 具体的な合意事項の確認 | メモランダム オブ アグリーメント |
名詞や動詞などのスペルと関連語
memorandum は名詞であり、一般的な動詞や形容詞としてそのまま使う単語ではありません。
複数形は memoranda または memorandums です。
ラテン語由来の memoranda はやや正式な印象があり、memorandums は現代英語でも広く使われています。
覚書を作成する行為を表したい場合は、prepare a memorandum、draft a memorandum、sign a memorandum などの動詞を組み合わせます。
記憶に関係する形容詞としては memorable、memorial、memorized などがありますが、覚書の文書名として置き換える語ではありません。
基本表現の例です。
We prepared a memorandum for the meeting.
会議のための覚書を作成しました。
The parties signed a memorandum.
当事者は覚書に署名しました。
ビジネス契約で使う覚書の英語表現
続いてはビジネス契約で使う覚書の英語表現を確認していきます。
Memorandum of Understanding と MOU
企業間の提携、共同開発、販売協力、買収交渉などで使われる代表的な表現が Memorandum of Understanding です。
略称は MOU であり、カタカナではエムオーユーと読まれます。
日本語では了解覚書、基本合意書、合意覚書などと訳されます。
MOU は、双方が協力の方向性や基本条件について理解を共有したことを文書化する際に使われます。
最終契約の前段階で締結されることも多く、詳細な価格、責任範囲、納期、解除条件などは後続の契約書で定めるケースもあります。
ただし、MOU だから必ず法的拘束力がないとは限りません。
準拠法、秘密保持、独占交渉、費用負担、紛争解決などについて拘束力を持たせることは可能です。
MOU の法的な効力は、文書名だけでは決まりません。
本文の表現、当事者の意思、対象取引、適用される法律を踏まえて判断されるため、重要な取引では専門家への確認が必要でしょう。
Memorandum of Agreement と agreement の違い
Memorandum of Agreement は、略して MOA と表記されることがある英語表現です。
Memorandum of Understanding よりも、具体的な合意事項を記録した文書として使われる傾向があります。
ただし、MOU と MOA の違いは国、業界、組織の慣習によって異なります。
表題だけで拘束力の強弱を断定するのは避けたほうがよいでしょう。
agreement は一般に契約、合意、協定を意味する名詞です。
双方が義務を負う本契約を作成するなら Agreement、Contract、Service Agreement、Distribution Agreement など、取引内容に沿った文書名が選ばれます。
覚書として条件の一部だけを補足する場合には Amendment、Addendum、Side Letter が適する場合もあります。
| 英語表記 | 日本語の近い意味 | 利用場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Memorandum of Understanding | 基本合意書、了解覚書 | 協業や交渉の基本条件 | 拘束力の範囲を明記します |
| Memorandum of Agreement | 合意覚書 | 具体的な合意内容の確認 | 業界ごとの用法を確認します |
| Agreement | 契約書、合意書 | 当事者の権利義務の設定 | 本文が最も重要です |
| Side Letter | サイドレター、補足覚書 | 本契約の補足合意 | 本契約との優先関係を定めます |
| Addendum | 追補、追加覚書 | 契約後の追加事項 | 対象契約を特定します |
覚書の題名に入れたい実務表現
英語の覚書を作る際には、タイトルだけでなく当事者名、締結日、対象業務、目的を分かりやすく記載します。
たとえば、共同研究についての覚書なら Memorandum of Understanding for Collaborative Research のような表題が考えられます。
秘密保持に関する合意なら Non-Disclosure Agreement が一般的であり、Memorandum という語を無理に使う必要はありません。
業務提携の意向を確認する文書なら Memorandum of Understanding regarding Business Collaboration のように、regarding を使って対象を示せます。
文書名よりも、合意の対象と拘束力の範囲を明文化することが実務上の重要事項です。
題名の例です。
Memorandum of Understanding regarding Strategic Partnership
戦略的パートナーシップに関する基本合意書です。
Memorandum of Agreement for Joint Marketing Activities
共同マーケティング活動に関する合意覚書です。
覚書を使った英語例文とビジネスメール
続いては覚書を使った英語例文とビジネスメールを確認していきます。
覚書の作成を依頼する例文
覚書の作成を依頼するときは、文書の目的と確認したい事項を端的に伝えます。
Could you prepare a draft memorandum based on our discussion?
この表現は、話し合いに基づいて覚書の草案を作成していただけますか、という意味です。
draft は草案を意味する名詞であり、動詞として草案を作るという意味でも使えます。
より丁寧な依頼にしたい場合は、We would appreciate it if you could prepare a draft MOU. と表現できます。
相手が契約実務に慣れている場合には MOU だけでも通じますが、初めての相手には正式名称を一度示すと親切です。
内容確認と修正依頼の例文
覚書の内容を確認するメールでは、確認箇所を具体的に示すことが大切です。
Please review the attached memorandum and let us know if you have any comments.
添付の覚書をご確認いただき、ご意見があればお知らせください、という自然な表現です。
修正を依頼する場合は、We would like to revise the section concerning the term of the agreement. と書けます。
term of the agreement は契約期間を意味します。
期限、秘密保持、知的財産、費用負担などは誤解が起きやすいため、該当条項を明示してやり取りするとよいでしょう。
メール本文の例です。
Dear Ms. Smith,
Thank you for your cooperation in preparing the MOU.
Please find attached our revised draft for your review.
We have updated the provisions regarding confidentiality and the project schedule.
Best regards,
締結や合意を伝える例文
覚書の締結を伝える場合は sign、execute、enter into などの動詞が使えます。
The two companies signed an MOU on technology cooperation.
この文は、両社は技術協力に関する基本合意書に署名しました、という意味です。
execute a memorandum は契約実務で用いられるやや正式な言い回しです。
enter into a memorandum は覚書を締結するという意味で使われます。
一方、approve a memorandum は覚書を承認するという意味であり、署名や締結とは少し異なります。
署名したのか、社内承認したのか、草案を共有しただけなのかを区別して動詞を選びましょう。
覚書の言い換え一覧と場面別の選び方
続いては覚書の言い換え一覧と場面別の選び方を確認していきます。
社内メモや備忘録の言い換え
日本語の覚書が、個人または社内で使う備忘記録を意味するなら、memo、note、record、minutes などが候補になります。
memo は短い連絡文や要点メモに適した表現です。
note は手書きのメモ、注記、短い記録など幅広く使えます。
record は記録そのものを指し、後から参照する正式な保存情報にも向いています。
minutes は会議議事録を意味するため、単なる覚書とは区別されます。
| 日本語での意味 | 英語候補 | ニュアンス | 使用例 |
|---|---|---|---|
| 個人用の覚書 | note | 簡単な書き留め | Make a note of the deadline. |
| 社内連絡の覚書 | memo | 短く実務的な通知 | I sent a memo to the team. |
| 会議に関する記録 | meeting minutes | 議論と決定事項の記録 | Please circulate the meeting minutes. |
| 正式な記録 | record | 保存性を重視した記録 | Keep a record of all changes. |
| 確認事項の一覧 | summary | 内容を要約した文書 | We prepared a summary of the discussion. |
契約や合意に関する言い換え
契約関係の覚書には、agreement、arrangement、understanding、protocol、letter of intent などの表現があります。
understanding は相互理解や了解事項を表し、MOU の中心となる単語です。
letter of intent は意向表明書を指し、今後の取引や提携に向けた意図を示す文書として使われます。
protocol は手順書、外交上の議定書、共同作業のルールなどを表すことがあります。
日本語ではどれも覚書と訳される場合がありますが、目的が異なるため、機械的な置き換えは避けましょう。
覚書の英訳は、日本語の名称ではなく文書の役割から選びます。
備忘記録なら memo、交渉上の基本合意なら MOU、拘束力のある契約なら agreement や contract が目安です。
略称やスラングの扱い
memorandum の一般的な短縮形は memo です。
Memorandum of Understanding の略称は MOU、Memorandum of Agreement の略称は MOA です。
覚書そのものを意味する特別なスラングは、ビジネス英語ではほとんど使われません。
くだけた会話で memo を使うことはあっても、法務や取引先との書面で俗語を選ぶのは適切ではないでしょう。
また、memo は社内で通じやすい短縮形ですが、相手国の法務慣行によっては正式名称を求められることもあります。
略称を使う場合は、最初に正式名称を書き、その後に略称を示すと読み手に親切です。
覚書作成で確認したい英語表現と注意点
続いては覚書作成で確認したい英語表現と注意点を確認していきます。
拘束力を示す表現
覚書に法的拘束力を持たせるかどうかは、英文の表現によって大きく変わります。
binding は拘束力がある、non-binding は拘束力がないという意味です。
This Memorandum is legally binding. と書けば、この覚書は法的拘束力を有します、という意味になります。
反対に、This MOU is non-binding except for the confidentiality provisions. とすれば、秘密保持条項を除いて拘束力を持たないことを示せます。
ただし、英語表現だけで安全性が確保されるわけではありません。
実際の取引内容や管轄地の法律に照らし、必要に応じて法務担当者や弁護士に確認することが重要です。
当事者と対象範囲を示す表現
覚書では、誰が当事者なのかを冒頭で特定します。
This Memorandum is entered into by and between Company A and Company B. は、会社Aと会社Bの間で本覚書を締結するという意味です。
by and between は契約書でよく見られる定型表現です。
対象となる業務は scope、purpose、project、activities などを使って説明できます。
scope of cooperation は協力の範囲、purpose of this MOU は本覚書の目的です。
対象範囲が曖昧だと、後に期待のずれが生じやすくなります。
何を行うかだけでなく、何を行わないかも記載すると、実務上のリスクを抑えやすくなります。
秘密保持や期間に関する表現
ビジネス上の覚書では、秘密保持、期間、終了条件、費用負担、知的財産の扱いが論点になりやすいところです。
confidential information は秘密情報、term は有効期間、termination は終了または解除を意味します。
intellectual property rights は知的財産権の一般的な表現です。
各条項を独立して拘束力のあるものにする場合は、その意図を明確な英文で記載します。
| 確認項目 | 英語表現 | 確認したい内容 |
|---|---|---|
| 目的 | purpose | 何のために締結するか |
| 協力範囲 | scope of cooperation | 担当業務と対象範囲 |
| 秘密保持 | confidentiality | 情報の管理と例外 |
| 有効期間 | term | 開始日と終了日 |
| 解除 | termination | 終了できる条件 |
| 準拠法 | governing law | 適用する法律 |
| 紛争解決 | dispute resolution | 協議、裁判、仲裁の方法 |
覚書の英語表記に関するまとめ
それでは最後に覚書の英語表記に関するまとめを解説していきます。
覚書の基本的な英語表記は memorandum であり、短縮形は memo です。
社内メモや簡易的な連絡には memo、正式な覚書には memorandum、企業間の基本合意には Memorandum of Understanding と MOU がよく使われます。
具体的な合意事項を扱う場合には Memorandum of Agreement や Agreement も候補になります。
重要なのは、日本語の「覚書」という名称だけで英訳を決めないことです。
文書が備忘録なのか、交渉の基本合意なのか、法的拘束力のある契約なのかを整理してから、適切な英語表記を選びましょう。
ビジネスで使う覚書は、表題よりも本文の条件、当事者、対象範囲、拘束力の記載が重要です。
英語メールでは draft memorandum、review the MOU、sign the agreement といった表現を使い分けると、意図が伝わりやすくなります。