湿球温度の計算方法は?乾球温度と相対湿度からの求め方を解説!(計算式)
湿球温度は、空気中の水分量や蒸発のしやすさを表す重要な温度です。
空調設備の管理、熱中症対策、工場の環境測定、農業や気象観測など、さまざまな場面で活用されています。
ただし、乾球温度と違って温度計の表示だけでは直感的に理解しにくく、計算式や湿度との関係で戸惑う方も少なくありません。
この記事では、乾球温度と相対湿度から湿球温度を求める考え方、実用的な近似計算式、湿度表の読み方、注意点まで順を追って解説します。
湿球温度の意味と計算結果の目安

それではまず湿球温度の意味と、乾球温度および相対湿度から求める際の結論について解説していきます。
湿球温度が示す蒸発冷却後の温度
湿球温度とは、温度計の感温部を水で湿らせた布で包み、風を当てたときに示す温度です。
水が蒸発するときには周囲から熱を奪うため、温度計の値は下がります。
この蒸発による冷却が落ち着いた時点の温度が湿球温度です。
空気が乾燥しているほど水は蒸発しやすく、温度計から多くの熱が奪われます。
そのため、相対湿度が低い環境では乾球温度と湿球温度の差が大きくなります。
反対に、雨天時や梅雨の時期のように空気が湿っている場合、水は蒸発しにくくなります。
このときは乾球温度と湿球温度が近づき、相対湿度が百パーセントなら両者はほぼ同じ値です。
湿球温度は、単なる気温ではなく、空気がどれほど水分を受け入れられるかを反映した温度です。
同じ乾球温度でも湿度が高いほど湿球温度は高くなり、人体が汗で体温を逃がしにくい状態に近づきます。
乾球温度と相対湿度から求める基本関係
乾球温度は、一般的な温度計で測定する空気の温度を指します。
室温計、気温計、温湿度計に表示される温度は、通常は乾球温度と考えてよいでしょう。
相対湿度は、その温度で空気が含むことのできる最大の水蒸気量に対して、実際にどの程度の水蒸気を含んでいるかを百分率で示したものです。
湿球温度を正確に算出するには、乾球温度、相対湿度、大気圧などを用いて湿り空気の状態を計算します。
一方で、日常的な確認や概算であれば、乾球温度と相対湿度を使った近似式でも十分に役立ちます。
湿球温度は乾球温度を上回ることはありません。
計算値が乾球温度より高くなった場合は、単位、入力値、式の括弧の位置を見直す必要があります。
代表的な温度と湿度の組み合わせ
乾球温度が同じでも、相対湿度によって湿球温度は大きく変化します。
たとえば乾球温度が三十度の場合、相対湿度が三十パーセントなら湿球温度はおよそ十九度前後です。
相対湿度が六十パーセントでは二十四度前後、八十パーセントでは二十七度前後まで上がります。
数値は気圧や計算方法によってわずかに異なりますが、湿度の上昇に合わせて湿球温度も高くなる流れをつかめます。
| 乾球温度 | 相対湿度 | 湿球温度のおおよその目安 | 空気の状態 |
|---|---|---|---|
| 二十五度 | 三十パーセント | 十五度前後 | 蒸発しやすく乾いた状態 |
| 二十五度 | 六十パーセント | 十九度前後 | 一般的な室内環境 |
| 二十五度 | 八十パーセント | 二十二度前後 | 湿り気を感じやすい状態 |
| 三十度 | 三十パーセント | 十九度前後 | 日陰では比較的乾燥した暑さ |
| 三十度 | 六十パーセント | 二十四度前後 | 蒸し暑さを感じやすい状態 |
| 三十度 | 八十パーセント | 二十七度前後 | 汗が蒸発しにくい高湿度環境 |
乾球温度と相対湿度による近似計算式
続いては、乾球温度と相対湿度から湿球温度を概算する計算式を確認していきます。
実用的な近似式の考え方
湿球温度は、本来であれば飽和水蒸気圧や湿り空気線図を使って求めます。
しかし、現場で毎回複雑な反復計算を行うのは手間がかかります。
そこで利用しやすいのが、乾球温度と相対湿度から湿球温度を近似する式です。
代表的な近似式の一つでは、乾球温度をT、相対湿度をRHとして、三角関数と平方根を組み合わせて湿球温度を推定します。
計算機や表計算ソフトを使えば、数秒でおおよその値を得られるでしょう。
ただし、この式はあくまで近似であり、校正が必要な測定や契約上の判定には、規格に沿った測定方法を優先します。
湿球温度の近似式の例です。
Twb ≒ T × atan 0.151977 × RH + 8.313659 の平方根 + atan T + RH - atan RH - 1.676331 + 0.00391838 × RH の三乗 × atan 0.023101 × RH - 4.686035
Tは乾球温度を摂氏で入力し、RHは相対湿度をパーセントの数値で入力します。
atanは逆正接を表す関数で、電卓や表計算ソフトではATAN関数として扱われます。
三十度と六十パーセントでの計算例
乾球温度が三十度、相対湿度が六十パーセントの場合を考えてみましょう。
近似式へTに三十、RHに六十を入力すると、湿球温度はおよそ二十三点九度から二十四度程度になります。
この値は、温度計を湿らせた状態で適切な通風を確保したときに近い温度です。
気温だけを見ると三十度ですが、湿球温度が二十四度付近にあるため、蒸発による冷却余地は残っていると読み取れます。
それでも湿度がさらに上がれば、汗の蒸発が進みにくくなり、身体への熱負荷は増していきます。
湿球温度は暑さの感じ方や作業環境の評価に結び付く数値として押さえておくと便利です。
計算例の入力条件です。
乾球温度は三十度です。
相対湿度は六十パーセントです。
近似計算による湿球温度は約二十四度です。
実測値との小さな差は、気圧、風速、湿度計の精度、測定位置などで生じます。
表計算ソフトで入力するときの注意点
ExcelやGoogleスプレッドシートで近似式を使う場合、湿度を六十パーセントではなく六十として入力する形式が多くなります。
セルの表示がパーセント形式になっていると、内部の値は〇点六として扱われることがあります。
この違いを確認しないまま式を貼り付けると、結果が大きくずれるおそれがあります。
湿度のセルが〇点六なら、計算式の中で百を掛けて六十へ換算する必要があります。
また、ATAN関数の引数、平方根関数、掛け算の優先順位も確認してください。
複雑な式を一つのセルに入れるより、途中の計算を補助列に分けると検算しやすくなります。
概算値を出した後は、乾球温度以下になっているかを必ず確認すると入力ミスの発見につながります。
湿り空気線図と温湿度表の読み取り方
続いては、計算式を使わずに湿球温度を把握する方法として、湿り空気線図と温湿度表を確認していきます。
湿り空気線図で確認できる項目
湿り空気線図は、空気の温度、水蒸気量、相対湿度、湿球温度、露点温度、エンタルピーなどの関係を一枚にまとめた図です。
空調設計や除湿計算、加湿計算では特に重要な資料となります。
横軸は乾球温度、縦軸は絶対湿度として示されることが一般的です。
相対湿度の曲線、湿球温度の斜線、エンタルピーの線が重なっているため、初めて見ると複雑に感じるかもしれません。
ただし、乾球温度と相対湿度が分かれば交点を見つけられます。
その交点を通る湿球温度線をたどることで、湿球温度を読み取れます。
温湿度表を使った素早い確認
現場で大まかな数値を確認したい場合は、乾球温度を縦軸、相対湿度を横軸にした温湿度表が役立ちます。
測定した乾球温度の行と相対湿度の列が交わる場所を読むだけで、湿球温度の概算値を得られます。
計算式を覚えていないときでも判断しやすく、作業前の暑熱リスク確認にも向いています。
| 乾球温度 | 四十パーセント | 五十パーセント | 六十パーセント | 七十パーセント | 八十パーセント |
|---|---|---|---|---|---|
| 二十度 | 十二度前後 | 十三度前後 | 十五度前後 | 十六度前後 | 十八度前後 |
| 二十三度 | 十五度前後 | 十七度前後 | 十八度前後 | 十九度前後 | 二十一度前後 |
| 二十六度 | 十八度前後 | 十九度前後 | 二十一度前後 | 二十二度前後 | 二四度前後 |
| 二十九度 | 二十度前後 | 二十二度前後 | 二十三度前後 | 二十五度前後 | 二十六度前後 |
| 三十二度 | 二十三度前後 | 二十四度前後 | 二十六度前後 | 二十七度前後 | 二十九度前後 |
表の数値は標準大気圧付近を前提とした概算です。
標高の高い場所や、正確な空調計算を必要とする場面では、使用する線図の条件も確認しましょう。
露点温度との違い
湿球温度と混同されやすい用語に露点温度があります。
露点温度は、空気を冷やしていったときに結露が始まる温度です。
湿球温度は蒸発による冷却後の温度であり、露点温度とは意味が異なります。
通常の未飽和空気では、露点温度、湿球温度、乾球温度の順に高くなります。
つまり、露点温度は最も低く、乾球温度は最も高い位置にあります。
露点温度が高い日は空気中の水分量が多く、湿球温度も高くなりやすい傾向があります。
結露対策では露点温度、熱中症対策や蒸発冷却の評価では湿球温度を重視すると、目的に合った判断がしやすくなるでしょう。
湿球温度を測定する器具と正しい手順
続いては、計算値だけに頼らず湿球温度を実測するための器具と手順を確認していきます。
乾湿計と通風乾湿計の特徴
湿球温度を測る代表的な器具は乾湿計です。
乾球温度計と湿球温度計を並べ、湿球側の感温部には清潔なガーゼや布を巻き付けます。
布の端を水槽に浸し、毛細管現象で常に湿った状態を保つ構造が一般的です。
自然通風式の乾湿計は、周囲の風の影響を受けやすい特徴があります。
より安定した測定を行いたい場合は、一定の風速で空気を送る通風乾湿計が適しています。
気象観測や品質管理では、通風条件を整えることが測定精度を左右します。
湿球温度は、温度計を濡らすだけでは正しく測れません。
適切な通風、十分な給水、直射日光や熱源からの隔離がそろって、初めて再現性のある値に近づきます。
測定前に確認したい設置環境
温度計は、直射日光が当たる場所や、エアコンの吹き出し口の近くを避けて設置します。
壁面、機械、人体から放出される熱の影響にも注意が必要です。
屋外で測定するなら、通気性を確保しながら日射を遮る百葉箱や日よけを用いるとよいでしょう。
室内では、人の出入りが多い場所や加湿器のすぐ近くも代表値を得にくい位置です。
測定目的に応じて、作業者の呼吸域、保管品の近く、室内中央など、評価したい地点を決めます。
測定器の性能だけでなく、設置場所の選び方も数値の信頼性を左右します。
ガーゼと水の管理方法
湿球側に使用するガーゼは、汚れや油分が付着していないものを選びます。
汚れたガーゼでは水の浸透や蒸発が妨げられ、湿球温度が本来より高めに出る場合があります。
給水には、可能であれば不純物の少ない水を使用します。
水槽の水が減っていないか、ガーゼが常に湿っているかも確認してください。
通風乾湿計では、規定の時間だけ送風した後に値を読み取ります。
読み取りの途中で呼気を近づけると、湿度や温度に影響することがあります。
短時間で済む確認ほど、基本条件を丁寧にそろえる姿勢が重要です。
計算値がずれる原因と精度を高める工夫
続いては、湿球温度の計算結果と実測値に差が出る主な原因、精度を高める工夫を確認していきます。
大気圧と標高による影響
湿球温度の厳密な計算には大気圧が関係します。
多くの簡易計算や温湿度表は、海面付近の標準大気圧を前提にしています。
標高が高い地域では気圧が低くなるため、蒸発や湿り空気の状態にわずかな違いが生じます。
日常の室内管理では大きな問題にならないことも多いものの、研究、製造、空調設計では無視できない要素です。
高い精度が必要な場合は、測定地点の気圧を入力できる湿り空気計算ツールや、対象地域向けの線図を使用しましょう。
温湿度センサーの誤差
デジタル温湿度計は手軽ですが、温度と湿度の両方に許容誤差があります。
温度が一度ずれ、相対湿度が数パーセントずれるだけでも、計算した湿球温度は変化します。
特に高湿度の領域では、相対湿度の誤差が湿球温度に反映されやすくなります。
センサーは経年変化やほこり、結露、薬品成分などの影響を受ける場合もあります。
定期的な校正、信頼できる基準器との比較、設置環境の点検を行うことが大切です。
表示値を一度見るだけで判断せず、測定条件と機器の状態を合わせて確認しましょう。
近似式を使う範囲
近似式は便利ですが、すべての温度と湿度の条件で同じ精度を保証するものではありません。
一般的な気温帯と相対湿度の範囲では実用的な値が得られますが、極端な低温、高温、低湿度、高湿度では誤差が広がる可能性があります。
また、近似式の種類によっても結果は少し異なります。
複数の計算式や線図を比べた場合、数十分の一度まで完全に一致しないことは自然な現象です。
管理基準が整数単位なら概算式で足りることもあります。
一方、工程条件の判定や試験成績書に使う場合は、採用する規格、計算手順、丸め方を事前に統一する必要があります。
精度確認の基本手順です。
乾球温度と相対湿度の測定時刻をそろえます。
近似式で湿球温度を算出します。
可能であれば通風乾湿計などの実測値と比較します。
差が大きい場合は、通風、日射、ガーゼ、給水、センサーの校正状態を順番に確認します。
暑さ指数と空調管理における活用場面
続いては、湿球温度が熱中症対策、空調管理、製造現場でどのように活用されるかを確認していきます。
暑さ指数との関係
暑さ指数はWBGTとも呼ばれ、熱中症の予防を目的に使われる指標です。
WBGTには自然湿球温度、黒球温度、乾球温度などが関係します。
ここで使われる自然湿球温度は、一般的な通風乾湿計で得る湿球温度と測定条件が異なることがあります。
そのため、乾球温度と相対湿度から求めた湿球温度だけで、WBGTを完全に再現することはできません。
それでも湿球温度が高い環境では、汗の蒸発による放熱が妨げられやすく、暑さ指数も高くなりやすい傾向があります。
高温に加えて湿球温度が高い日は、体感以上に熱中症リスクへ注意が必要です。
湿球温度は暑さ対策の判断材料になりますが、日射や照り返し、作業強度、衣服、風の有無までは単独で評価できません。
屋外作業や運動時は、公式の暑さ指数情報や現場の測定値を併用して対策を決めることが重要です。
エアコンと除湿運転の判断
冷房を使っていても湿度が高いと、肌に汗が残り、蒸し暑さを感じることがあります。
この状態では湿球温度も下がりにくく、人体の蒸発冷却が十分に働きません。
室温だけを下げるのではなく、除湿運転や再熱除湿を使って相対湿度を調整すると、快適性が変わることがあります。
たとえば室温が二十七度でも、湿度が高ければ不快に感じる場合があります。
適切に除湿できれば、同じ室温でも湿球温度が下がり、汗が蒸発しやすい環境へ近づきます。
ただし、過度な除湿は喉や肌の乾燥、静電気などにつながることもあります。
温度と湿度を別々に確認し、用途や季節に合うバランスを探すことが大切です。
工場と保管環境での管理
工場、倉庫、食品製造、印刷、繊維、電子部品の保管などでは、温湿度管理が品質に直結することがあります。
高湿度環境では結露、カビ、腐食、吸湿、材料の寸法変化といった問題が起こりやすくなります。
一方で、乾燥しすぎると紙や木材の反り、静電気、粉体の飛散などが課題になる場合があります。
湿球温度を確認すると、単なる相対湿度だけでは見えにくい蒸発や冷却の状態を把握しやすくなります。
特に冷却塔、加湿器、乾燥工程、換気設備では、湿球温度が運転効率の検討に関わります。
温度と湿度の記録を継続し、湿球温度も補助指標として比較する運用が、異常の早期発見につながるでしょう。
湿球温度の計算方法のまとめ
湿球温度は、水が蒸発するときの冷却作用を反映する温度であり、乾球温度と相対湿度の関係を理解するうえで欠かせない指標です。
空気が乾いているほど湿球温度は乾球温度より低くなり、湿度が百パーセントに近づくほど両者は近い値になります。
乾球温度と相対湿度が分かれば、近似計算式、温湿度表、湿り空気線図を使って湿球温度を求められます。
日常的な概算では近似式が便利ですが、正確な判定が必要な場面では、気圧、通風、センサー誤差、測定方法まで考慮することが重要です。
湿球温度を活用すると、室内の蒸し暑さ、汗の蒸発しやすさ、空調の除湿効果、作業環境の熱負荷を多角的に見られます。
乾球温度だけでは分からない空気の状態を把握するために、相対湿度と湿球温度をセットで確認してみてください。